第7話
待ち合わせ場所に着いた。車を止め、いつものように運転代行を頼む。その店はウルフマン達の貯まり場なのだろう。メッセージに書かれた店に入る。すると視線 俺はあの後リックに連絡をして日本にいるであろうアイツの仲間に連絡をとってもらった。連絡先を聞いて電話をする。そしてアイツの迎えを頼んだ。これでひとまず、落ち着いたかな。おっともうこんな時間だ午後診に行かないとその前に昼飯を食べないとこの後も何時に終わるか解らないからな。食堂に行くとさっきの救急外来のドクターがいた。
「マルクス先生も今からですか? お互い食べれるうちに食べて置かないといつ帰れるか解らないですからね。私は今日は当直なので余計、今食べておかないとって感じですね」
と同じテーブルで一緒に食事をした。
「伊藤先生は何故救命医をされているのですか?」
「そうですね。研修医時代に大きな災害があってその時現場に私も行ったのですよ。そこでは、命のやり取りをしなければならない程、酷い現場でした。普通ならそんな現場に行ったらトラウマ抱えて仕事さえ出来くなるのでしょう。でも私はその時助けた患者から感謝されたのです。救えなかった命は沢山ありました。でも自分が携わった患者の命が救われ感謝された。それが、とても嬉しかったんです」
そう静かに話すそのドクターの内に秘めた燃えるような熱い使命感を感じた。
「伊藤先生は素晴らしいドクターですよ」
俺は本当にそう思った。
「マルクス先生だってあの国境なき医師団で活躍されていたと聞きましたよ。私には出来ませんね。日本でやっているだけで一杯一杯です」
「若かったから出来たのだと思いますよ。とても過酷でしたから。そこに十年居たお陰で色々な国の言葉を覚える事が出来たのですよ」
「若かったって、今でも充分お若いですよね?」
「こう見えて俺は四十超えてますよ」
そう言っておかなければ今までの功績を怪しまれる。六十過ぎでもいいのだが、見た目はどう見ても若いからな。それ位なら怪しまれないだろう。
「そうなんですね! いやー私と同じ位だと思っていたので、驚きです」
「いやー! 伊藤先生の方こそお若く見えますよ。二十代かと思ってました。日本人は本当に若く見えますから。それに結婚もされているし今が一番油がのって仕事が楽しいんじゃないですか?」
少し照れながら伊藤先生は
「そうですね。そうかも知れません。家族が居るって良いものですよ。マルクス先生が独身だなんてビックリです。知ってますか? 先生は今、院内の独身女性の憧れの存在になってますよ」
笑顔で言われる。有紀から聞いていたから知っていたが、そこまで凄い事になっていたのか‥‥‥。
「そうみたいですね。やたら女性の視線が多くて困っているのですよ。男性が好きって訳ではないですよ。俺も普通に女性が好きです。ただ縁が無かっただけです」
本当にそうなのだ。俺はリックのように人間の女性に好意を抱いた事は無かったのだ。今までは‥‥‥。昼食を終え午後はいつものように病棟へ向かう。
今日は有紀がバイトに来る日のはずだが、姿は見ない。一通り仕事を終わってその日は普通に帰る事が出来た。そうだ、あの今日の患者の狼男に連絡しよう。
話が聞きたい何故こうなっている。俺達は人間に正体がバレないようにひっそりと暮らして来たというのに、あんなに派手にやらかしてくれたら困る! カルテに連絡先が書いてあった、偽っていなければ繋がるはずだ。車に乗り電話をかける。
「マルクスだ。レオナルドか?」
「ああそうだ。例の話だよな、待ち合わせてそこで話す。今、電話では話せない。こっちもごたついているのでね」
「解った」
「指定先の店の名前と場所をメッセージで送っておく時間も決めておく」
「待っているよ。じゃあ」
と電話を切る。仲間同士で何かがあったんだな。奴等は群れリーダーを持つ。まず、問題はそこだろう。一度家に帰ってシャワーを浴びよう。アイツのせいで獣の匂いが身体に沁みついた。俺達ヴァンパイアと狼男とは仲は余り良くないが、俺のような始祖と呼ばれる純血種に対しては礼を尽くして偽ったりしない。能力の差という事もあるが、逆らったりはしないし、そんな事はさせない。シャワーを浴びて出てスマホを見るとメッセージが送られていた。さあ行こうか。
車に乗り指定された店に着いた。そこの店の中にはいる。
「お前はヴァンパイアか。ここはヴァンパイアのような者が来る場所じゃない! 俺達の縄張りに入って来るな!」
その場にいた狼男達の視線が俺に集まる。そこで俺は自分の存在を示す様にオーラを放つ。これは始祖としての存在アピール見たいなものだ。ただの吸血鬼ではないのだと示さないと反感を買う恐れがあるからだ。そこで、レオナルドが出て来た。
「そんなに始祖オーラを出さなくても大丈夫だ。ここにいる連中はヴァンパイアを敵視していないから普通にしてくれ、そんなに強いオーラを出されると逆に怯える者も出る」
「そうか、悪かった」
と言って力の開放を押さえた。そこでおれは本題に入る。
「それで、どうしてこうなったのか話してくれるんだよな」
「多分あんたが考えている通りだよ。リーダー争いだ」
「お前達がリーダーを持つ事に俺達は関心はないし興味もない。だが、これ程暴れて貰うとこっちも困る。もっと静かにやれないのか? お前達だって正体がバレたら困るだレオナルドは、大きな溜息を吐く。
「そうなんだが、一部の奴が今のリーダーに対して不満があったようでその腹いせで暴れたようだ。もう何人かの人間が餌食になっている。俺はそれを止めようとしてこうなった。多勢に無勢では不利なのは解っていたが、目の前で襲われそうになった人間を無視する事は出来なかった」
そう言って俯く。
「で? 今のリーダーは何て言っているんだ? こんな事を続けていてはいずれバレるぞ」
「‥‥‥リーダーは殺された。今はリーダーは不在だ」
俺は言葉を失う。群れのリーダーを襲う、そんな事今まで聞いた事は無いぞ。
「次のリーダー争いが起こっている、リーダーを襲った奴等は人間をもっと食わせろといった強行派だ。俺達はそこまで人間を食いたいとは思っていない、今は食べる物は沢山あるそれで満足なんだ」
「まあな、美味い物の味を知ってしまうと戻れなくなるからなあ」
「それに昔から俺達に人間は死刑になった者の遺体など提供してくれているから、食べれない訳ではないんだ」
俺は考える。リーダーの不在はいい状況とは言えない仲間の暴走を抑える者が絶対必要だ。
「レオナルド、お前がリーダーをやれ」
「それはここにいる仲間からも言われている。俺は今まで通りの人間との関係を保って行きたいと思っている。腑抜けと言われても俺は何とも思わない」
「レオナルド、俺はおまえが適任だと思うぞ。俺達は人間達と上手くやっていかないと行けない。もう魔女狩りのような歴史は起こさせては行けない。ここは俺が出て行こう。始祖の力を使う事になるだろうが、その方が解決が早い」
「悪いな、俺達の種族の問題に他の種族である者の力を借りないと行けないなんて‥‥‥俺達で解決しないと行けないのに」
「その方が俺達の方も助かるからいいんだ。気にしなくていい。今のこの状況が俺達まで危うくしているんだ。俺を使ってくれてくれて構わないさ」
「さあ、今度はその強行派とやらのリーダー候補に挨拶をしに行こうじゃないか」
俺は自分の中のヴァンパイアの血が騒いでいるのが解る。こういう事には血が
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