第四十四話 民主主義の組織。
さて、大会決勝を出場するかどうかだけど、出ることにしました。
正直これはかなりバンド内で揉めた。
まあどうしてそんなことになったかと言うと、海の反対が大きかった。
楽器でも運動でも何でも良いんだけど、体を動かす事を頑張っている人ならわかってくれると思うんだけど、数日間サボってしまっただけでも体の感覚は相当鈍ってしまう。
これはバンドになると個人の技量だけでは収まらない。
だから海は、
「無理。」
と開口一番に言っていた。
実は僕もその気持ちがわからないわけではなかった。だって決勝に出できてるバンドみんな上手いし、上手いだけならいいけどみんな高校生とは思えない演奏するんだもんな。何というかみんな独自の世界観を持ってて、自信を持って活きいき動いてる。正直自分と彼らが同じようにカッコ良く演奏できている自信がない。しかも技術が高くても審査員からどう評価されるか分からない。負けるのが怖い。今までの自分達の努力が否定されるみたいで。
まあそんなことみんなには言わずにどっちでもいいって言っちゃいました。冴月はめっちゃ謝ってめっちゃみんなにお願いして出たいって言ってた。そしたら凛音は
「僕は全然いいよ。」
って言ってました。いつもの凛音くんです。爽やかでした。
てな訳で、うちのバンドは結成当時の約束の一つに、意見が割れてしまった時には多数決をするっていうのがある。で、その約束に則って、我がバンドは今度の決勝大会に出ることになりました。まあもう碌に練習する時間もないからかなり切羽詰まってることには変わりないんだけどね。受験生だからみんなこれからバンドで合わせてってやってる時間を増やすわけにもいかない。部活動はもちろん大事だけど、受験は人生を決める一大事だから。
帰りに、海から声を掛けられた。
「反対はしたけど、大会はまあどうにかなると思う。何より冴月がまた来るようになってよかった、このまま卒業してさよならなんてなったら家まで引っ叩きにいってた、お疲れ様。」
さすがは海さんってとことだな、冴月のこと心配してたんだ。
「まあ元々合わせはかなりしっかりできてたし、大丈夫でしょ。俺もまた来てくれて安心したよ。」
「二人の関係がどうなろうが知ったことじゃないけど、あの子のこと泣かせないでね。私見てるから。」
「え?」
二人の関係と言われても彼女いるし友達以上にはなれないんだけど。まあでも海の言う通り冴月を泣かせることはないようにしよう。あの言い方怖かったし何されるか分からない。
「それじゃあね。」
颯爽とお帰りになられた、僕も帰ろ。
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