第二十四話 幸福な喪失。 上

 淡藤あわふじは、今度は僕の腕を抱いてきた。

淡藤の息が首に掛かる、丸みを帯び、柔らかく豊かな胸が腕を包む。

どんなに強い理性の持ち主であっても湧いて出てくるかの様な欲を抑えられるとは思えない。


 「ねぇ、紬つむぎ、私さ、もう無理かも。」


 息を切らした声が余計に気持ちを煽ってくる。


 「えっと……、どうしたらいい?」

 「女の子に、言わせるの?」


 恥ずかしくて淡藤の方を向けない。

なんでこんなに大事な場面でこんなかっこ悪い台詞しか言えないんだ。

こんなことなら中高でもっと恋愛に関心を持っておくべきだった。


 「……。」

 「……。」


 二人とも何も喋らずに時間が過ぎていく。

モニターからは男女の喘ぎ声が聞こえている。


 「……もう、仕方ないなぁ。紬、こっち向いて。」

 「なっ。」


 淡藤の方へ体を向け、何か聞こうとした途端、口に慣れない感覚があった。


 「ちょっ、淡藤!?」


 それがキスだった事に気がついて、咄嗟に身を引いてしまった。


 「ちょっと、なんで逃げるの?動かないのっ。」

 「ちょっと、え、何?」


 淡藤はその魅力的な体躯をスルリと動かして、僕の上に跨ってきた。


 「ほら、紬、もう一回。ね?」

 「え、いやでもさ……。」


 いきなり過ぎて心の準備ができてないし、今家には母さんも蓮れんもいる。

でも気持ちとは対照的に淡藤に興奮してしまって、アレはとっくに準備できてしまっている

とにかく降りてもらわなきゃ。


 「とにかく一回降りて。」

 「もー……。良い子だから静かにしてて。」


 耳元でそう囁かれただけで、今まで考えていたことなんてどうでも良くなった。

淡藤は腰を前後に動かして、胸と同じく豊かな臀部を擦り付けてくる。


 今度はさっきみたいにいきなりじゃなく、ゆっくり優しいキスだった。


 「っぷは!」


 ゆっくりキスされている間、息ができなくて苦しい。


 「かわいいね、鼻で息して大丈夫だよ。ほら、今度は紬からして?」

 「……うん。」


 恋愛も碌にしてこなかった僕は当然キスの仕方なんてわからないけど、淡藤のさっきのキスを真似した。

今度は鼻で息をしたまま。


 「んっ、んん。」


 淡藤の扇情的な喘ぎで気持ちが昂る。

もっとしていたい。


 「っ!?……。」


 口の中に柔らかいものが入って、歯に当たって止まった。

それは、歯の周りを舐めていってまた歯を優しく押す。

僕が口を開くとヌルリと滑り込んで、ネチネチと執拗に舌に絡み付いてきた。


 「フゥ、フゥ。」


 体が熱い。

ドキドキしていて呼吸が荒くなる。

二人とも口元がお互いの唾液でベチャベチャになっている。

でも今はそんなことは気にならない。

キスが甘いってよく聞くけど、ただの比喩表現だと思ってた。

本当に甘いんだ。

もっと、もっとしたい。





 それから、二人とも自然と唇を離すまで、貪るように互いを求め合った。


 「ねぇ、触って。」


 淡藤は僕の顔を見上げながら、僕の手を胸から腹部、腰、それから更に下に滑らせていった。

淡藤の秘部は服の上からでもわかるほどに潤んでいた。


 「お願い紬、私もう我慢できないよ。」


 僕ももう限界だった。

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