第二十二話 有言実行人。

 楽しかった次の日の朝、僕は普段の朝には聞き慣れない音で目が覚めた。

昨日ゲーム、夜やったから、消し忘れたかも。


 「あ、つむぎおはよー。」

 「んあ?」


 れんがいた。


 「何してんの?」

 「ゲーム。」

 「……、あーそう。」


 消し忘れじゃないならいいや。

もうちょっと寝よう。






 「ふぁあー。」


 二度寝した方が起きる時辛いんだけど、眠いもんは眠いんだよな。

起きてもまだ蓮は遊んでいた。

しっかりハマってるな、紹介した身としては嬉しいけど。


 「まだやってたんだ。」

 「うん、今日早速買いに行ってくる。」


 行動力の化身だな。


 重い体を起こして顔を洗う。

ご飯食べよう。

食べている間に蓮は母さんと家電量販店にゲーム機を買いに行った。




 「ただいま。」

 「ただいまー。」

 「おかえりー。」


 蓮は帰って来てすぐにリビングのテレビにゲーム機を接続して遊び始めた。

あー、自分が初めてゲームを買ってもらった時のことを思い出すな。

それから蓮は母さんに注意されるまで熱中していた。






 三人でお昼を食べた後、淡藤あわふじが家にきた。


 「こんにちはー。」

 「あわちゃーん!いらっしゃい。今日はどうしたの?」

 「やることなかったから会いに来ちゃった。」

 「えー、そんなのちっちゃい頃以来だね、嬉しい!」

 「そうだっけ?お菓子買ってきたよ、食べよ。」


 蓮も淡藤も楽しそうに笑ってる。

こう見ると仲の良い姉妹みたいだ、淡藤がお姉ちゃんだったら最高だろうな。


 それから僕達は淡藤のくれたお菓子を食べながら何気ない話をした。


 「そう言えばリビングにゲーム機置いたんだね。」


 今日買ったばかりのゲーム機の話題になって蓮のほっぺたがキュッと上がった。


 「あれねー、実は私のなんだー。」


 本当に嬉しそうに話すなぁ。


 「え?紬君のじゃないんだ!?蓮ちゃんゲームやるんだっけ?」

 「ううん、昨日がほとんど初めてなんだけど、足の怪我で走れないからさ。」

 「あぁ、ごめんね。」


 淡藤が申し訳なさそうに謝る。

まあ今まで蓮が陸上に打ち込んできた姿を知ってるからな。


 「なんで謝るの?全然気にしなくていいよ!それより昨日さ、片瀬かたせ君ってアニメ詳しくて仲良くなった人とさ、ゲームしたんだよ、それでさ、本当に楽しくて!」

 「えー、そんなに面白いんだ、今度私にも教えてね。」


 なんか当の本人はそこまで深刻に捉えてないみたいですね。はい。


 「そうだ!今から片瀬君とゲームする約束してるんだ、あわちゃんもやろうよ。」


 いつの間に。


 「急にお邪魔したらその子に悪いでしょ?私は紬くんのお部屋で遊んぶことにする。」

 「え?僕の部屋?」

 「んー?ダメなの?」

 「いや、良いけど。」

 「ありがと。」


 部屋、何にもみられてやばいものないよな?昨日ちょうど掃除したし。


 「えー、ねえお母さーん!紬にあわちゃんとられたー!!!」

 「なーに面白いこと言ってんの?蓮ちゃんにもいつも構ってくれてるでしょ。」

 「え〜。」


 悪いな蓮よ、今日はお兄ちゃんがいただくぞ、恨んでくれるなよ。

なんて言ってみるけど、淡藤を部屋に入れるなんて大きくなってから初めてだぞ。

やばい、緊張してきた。え、どうしよう。やばい。ちょっと待ってもらってもう一回部屋掃除しよう。

うん、そうしよう。

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