第十二話 安息の夜。
結論から言えば、
いや、そう見えただけでもちろんお医者さんは頑張ってくれたんだけど。
僕が二時間の間、ずっと気を揉んで待っていたのとは対照的に、手術が終わった先生は
「終わりましたよ。二十分もすれば目が覚めると思います。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
こんな感じであまり実感の無いまま病室で寝ている蓮の隣に座っている。
待っていた人がこれなら本人は本当に何が起こったかわからないだろう。
なんかドット疲れた、今すぐ帰って寝たいけど、
「ねえ、紬!なんで寝てんの!」
「え?あ、やべ。寝ちゃってた。ごめん。」
椅子で寝ちゃってたみたいだ。
「なんでまだいんの?」
あーそうだ、渡そう。
「あ、これ手術成功のお祝い。淡藤と選んだんだけど、陸上復帰してからも使いやすいようにタオルとヘアゴム。」
淡藤からのお祝いだから素直に受け取ってくれると良いんだけど。
「ありがと。」
「うん。成功して良かったね。」
これまでの様子との違いにびっくりしたけど、受け取ってくれて何よりだ。
「じゃあ、もう面会終了時間だし帰るね。」
「うん。」
「うわー、眩し。」
病院を出ると、太陽の光で目を細めた。
病院の壁が白いから余計反射がキツくなってる。
「帰る前に母さんと淡藤に蓮の手術が無事に終わったことを知らせておくか。」
二人にメッセージを送ってから帰路につく。
帰り道は普段感じない甘い匂いがしていた。
「頭いてー。」
目が覚めると自分の部屋のベッドにうつ伏せになっていた。
変な時間に寝過ぎて頭痛がする、気持ち悪い、水飲みたい。
スマートフォンが鳴ってる。
メッセージの通知か。
コップに注いだ水を流し込みながら内容を確認する。
「淡藤か。」
内容はなんとも淡藤らしいものだった。
『本当に!?良かったー。安心したよ、もうずっと心配で。明日絶対蓮ちゃんのお見舞い行くね!紬君も行こうね、絶対だよ!』
画面の向こう側の顔が見えるな。
「ただいまー。」
お、母さんも帰ってきた。
「おかえり。」
「紬ぃ、ありがとう!本当にありがとう。紬のおかげで蓮ちゃんの手術もなんとかなったんだよ。」
「大袈裟でしょ。なんもしてないよ。」
「大袈裟じゃないよ。紬がいたからお母さんも安心できたんだから。」
母さんの声は少しだけ震えていた。
失敗はないなんて言ってたけど、やっぱり娘の事は誰よりも心配だったんだな。
みんなの反応を見て、僕もやっと安心できた気がする。
上手くいって良かった。
良かった。
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