第四話 春を思う少女。

 三月二十七日、今日も幼馴染のかけると遊ぶつもりだ。

別にいつも約束をしているわけではないが、翔は予定がない日はたいてい朝からゲームをしているため、いたら声を掛ける。が、今日はそうはならなかった。


 「つむぎぃー。ちょっと来てー。」


 その理由がれんだ。うちの妹は、僕が高校に入学して少しした頃から、いきなり名前を呼び捨てにして、態度がキツくなった。

思春期だから仕方ないのかもしれない。

だが、母さんに頼まれたとはいえ、こんな態度で呼ばれたら、いい気分はしない。


 「なに?」

 「ちょっとさ、プリンとってきて。冷蔵庫。」


 怪我をしているとは言っても、なにもできないわけではない。蓮のいるリビングから台所にある冷蔵庫まではすぐにいける。


 「わざわざ部屋にいる兄を呼びつけるほどのことでもないだろ。」

 「は?私怪我してるんだけど。しかも紬どうせ暇じゃん。陸上も高校からやってないんだから。」

 「部活なら入ってるんだけど。しかも暇かどうかとかじゃないから。」

 「軽音部とかあんなの遊びじゃん。きついことなんてないでしょ。」

 「はぁ。バカかよ。」


 呆れた。確かに運動部に所属している人たちは辛い練習に耐えて目標に向かっていく尊敬できる人たちだ。

蓮は強豪校の揃う地区から全国大会に出るほどの実力を持っている。

けどそれを鼻にかけて人の頑張りをバカにする人間は最低だ。

それに軽音だって自分の目標に向かって努力してるし、なにも知らない奴にとやかく言われる筋合いはない。


 「紬!早くしてよ。」


 僕は無言でプリンをリビングのテーブルに置いて、部屋に戻った。

今日は翔もゲームをしていないみたいで、しばらく一人で遊んでいたが、つまらなくなってやめた。






 夜になり、母さんが帰ってきて、蓮の世話はしないと告げた。


 「あんな奴のお世話してやるなんて無理。性格悪すぎ。」

 「しょうがないじゃない。蓮ちゃんも怪我で落ち込んでるんだから。」


 それにしてもあの態度は無いだろう。


 「わかった。今日帰りにあわちゃんに会って、蓮ちゃんの話したらお手伝いしてくれるって言うから、お願いする。紬はあわちゃんのお手伝いして。」


 青木淡藤あおき あわふじ、四月から大学生になる。近くに住む一つ上の女の子で、昔から蓮も含めた三人でよく遊んだ。僕たち兄妹と一番仲の良い幼なじみだ。

翔も仲が良いが、基本的に僕とオンラインで遊ぶだけで、あまり顔を合わせることはない。

 

 「わかった。」

 「じゃあ、連絡しておくね。」


 蓮は淡藤に良く懐いているし、これで僕の平和な春休みが帰ってくるだろう。

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