第85話 お兄ちゃん!
着替えの準備と、お水やウェットティッシュといった必要品を小さなメンズバックに放り込んで、玄関に向かった。
そしてドアを開く。
「お兄ちゃん!おはよう!」
ゆきなちゃんは、照りつける太陽の光よりも明るい笑顔で俺に挨拶した。可愛い花が
俺がゆきなちゃんの服装を
俺の腹部に思いっきり自分の顔を擦り付けてくるゆきなちゃんを見下げると、実に
触ったら柔らかそうだな。ていうか、この間、飽きるほど触ったから、どれほど柔らかいかはすでに確認済みだ。
そう、あれは、まるで
というわけで、俺の手は、無意識のうちに、ゆきなちゃんの頭に向かっていた。そしてそっと手を頭上のおく。
や、柔らかい。なんなら24時間でも触っていられる。
俺が十数秒間、ゆきなちゃんの柔らかい髪を
体全体は細いのに、メリハリのあるボディラインを見ると、多くの女が
キスとか、まじ無理だろ。
俺は心の中で、ハードルの高さにげんなりしていると、西園寺刹那は俺を
な、なんだ。別にキスとかそんな
俺は恐る恐る西園寺刹那をチラ見するが、当の本人はすごく不機嫌な様子でいらっしゃる。
「よ、よ!おはよう」
甘々モードのゆきなちゃんと、冷め切った氷の女王様モードを同時に展開している西園寺姉妹に恐れ
「おはようございます」
俺の挨拶にはちゃんと反応してくれるが、口調や態度は相変わらず冷たい。本当に、人の心や気持ちは分からんな。
「行こう!ふじにいちゃん!」
すりすりを終えたゆきなちゃんは、元気いっぱいな表情で俺を見上げながら言った。
「あ、ああ行こうか」
かくして、俺たちは、昭和時代に建てられたこの古いマンションを出た。
ゆきなちゃんが真ん中、右に俺、左に西園寺刹那という感じで俺たちは、歩いている。でも、どこに向かっているんだろう。ここ電車と反対側なんですけど?
俺は気になり、西園寺刹那に問うた。
「西園寺、俺たちどこ行ってるの?」
俺は首だけ動かして、西園寺刹那を見たが、彼女はこっちを向くそぶりを一切見せずに、口だけ開いた。
「駐車場です」
「あ、うん」
そういえば、いつもここ来る時、自家用車でくるんだったよな?そう考えると、西園寺刹那も
俺たちが数分ほど歩くと、駐車場が見えてきた。一応俺も免許は持っているけど、今まで車とは全く縁のない生活をしてきた俺は、大人しく、西園寺刹那の3歩後ろを歩いた。
やがて西園寺姉妹は、いかにも高そうな外車のところに行くと、鍵を
だ、大学生が、それも綺麗な女の子がBMWのSUVを運転するなんて……
「藤本さん?乗らないんですか?」
俺はあまりにもシュールな光景に体が
「あ、ごめん。今行く」
西園寺刹那の冷静な
運転席には西園寺刹那、助手席にはゆきなちゃん。そして、俺は広々とした後部座席に。
「レッツゴー!」
「ゆきなちゃんはしゃぎすぎ」
「だって、ずっと楽しみだったもん!お姉ちゃんもでしょ?」
「い、いや。私は別に…」
「
「こ、この子は、い、一体何を言ってるのかしら!」
エンジンをかけようとした西園寺刹那は大慌てで、自分の手でゆきなちゃんの口を
「う、ヴうう」
ゆきなちゃんがすごく苦しそうですけど?いかん。俺はゆきなちゃんの家庭教師だ。どれくらい給料もらえるかはさっぱり分からんが、ここはひつと助けてやるのが、教師としての勤めというヤツだろう。助けるついでに、気になることでも聞いておこう。
「ゆきなちゃん」
取り込み中だった二人は、俺の声が聞こえると、ピタッと動きを止めて、
俺は満足げなドヤ顔を決めてから、気になることを聞く。
「俺の呼び名がふじにいちゃんから、お兄ちゃんに変わったね」
俺の問いに、ゆきなちゃんは、しばし目を
「そう!刹那お姉ちゃんをお姉ちゃんと呼んでるから、ふじにいちゃんもこれからお兄ちゃんって呼ぶことにした!血は繋がってないけど、ふじにいちゃんは私のお兄ちゃんだよ!」
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