第3話 事案発生
JR三ノ宮駅付近から徒歩5分のところにある小さなコンビニ。
こじんまりとしたスペースにはいろんなものが所狭しと並べられている。店舗の大きさの割には品揃えががいいのが印象的だ。
まだ外は明るく、室内はクーラーが勢いよく涼しい風を送り、居心地の良い静寂が訪れる。俺はこの雰囲気が好きた。何も考えずぼーとしていると俺の頭を悩ます邪念とか雑念が吹っ飛んでいくから。
不意にスマホで時刻を確認した。
「16時30分か」
そろそろ上がるタイミングである。商品発注を済ませ、深夜の仕事をしてくれるバイトを待つ。すると、自動扉から軽快な足取りで俺のいるレジへと向かってくる一人の女の子。
「お疲れ様っす」
「おう」
サラサラした金髪が揺れ、化粧品と香水が混ざったような香りが俺の鼻をくすぶる。
この子は青山かほ。大学生であり、明日授業がない日には深夜の仕事をやってくれる
青山かほは俺を一瞥したのち、すぐ更衣室へと向かった。
俺は最後に乱れた商品を整えたり、ごみなどが落ちてないのかを確認しているうちに着替えを済ませた彼女がレジにきた。
「あとは頼むぞ」
「はーい」
俺の声に間抜け面で答える青山。俺はちらっと彼女を横目で見た。普通に綺麗なギャルっぽい見た目なんだけど、そこそこあるバストとやる気のない顔が重なってなんとシュールな光景だ。
適当に挨拶を終えると、俺はコンビニを後にした。
「熱ぃ」
涼しいコンビニから外へ出るや否や、物凄い熱気が俺に襲い掛かってきた。熱いのと夏は苦手だ。肌が弱いせいか少しでも紫外線に当たると皮膚に赤い斑点ができたり、食材や料理がすぐ傷んで自炊するのにもっと手間がかかるなど、夏はデメリットの方が多い。
いっそのことずっと春か秋が続いたらどれだけいいか。
そんな下らないことを考えながら歩いていた。普通だけど貴い日常。俺はこの生活を気に入っている。どうかこの平和な日々が続きますように。と心の中で囁いてみる。しかし運命はいつも気まぐれに俺の願いとは真逆の悲劇をつきつけてくることがある。だから普段は願い事はしない。だから俺は心の中で願い事を呟いた瞬間に気づいてしまった。俺があまくなってしまったたという事に。
「駅構内において火災は発生しています。皆ここから離れて避難してください!」
うん?
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