第173話 甘々ショート⑨


 ラジオの生放送に夏祭り、父親の市長選挙と盛り沢山の一日。祝勝会が終わり、雨谷家に漸く静かな夜が訪れた。

 隣で横になる彼女は寝付けずに天井を見上げてた。


「ふふっ、眠れないの?」


「……とても素敵な一日だったので、未だに興奮しているみたいなんです。落ち着かせようとしているのですが……」

  

 毎朝五時頃に目を覚ます彼女だから、例え寝れていなくてもその時間には活動してしまうだろう。なんとかして彼女をリラックスさせて少しでも早く寝かさないと……


「雫、服脱いで?」


「あ、あの……こ、ここでするんですか?」


 すぐ隣の部屋には彩が寝ていて、その隣にはお父さんの寝室。色々したいけど……ふふっ、流石にね?


「ふふっ、しないしない。裸で抱き合えば落ち着くかなって思って。ほら、おいで?」 


「で、では……失礼します……」


 エアコンがよく効いた室内。

 タオルケットの中で、温かく柔らかな私達が一つに包まっている。

 この状況……理性を抑えるのに必死だけど、彼女の為ならば我慢我慢。

 頭を撫でながら時折優しくぽんぽんと叩くと、彼女は愛しげに顔を擦り寄せる。

 緩やかな時間が過ぎ、暫くして尋ねた。


「落ち着いたかにゃ?」


 寝ぼけ眼にふにゃふにゃと返事をする彼女を想像していたのに……顔を真っ赤にした彼女は、口をパクパクさせながら呟いた。


「ど、どうしましょう……もっと興奮してしまいました……」


 私は悪くない。可愛すぎる彼女が悪い。


「……タオルでも噛んでて? もう抑えられないから」


「あ、あの、晴さ── 」



 気が付けば十時過ぎまで寝ていた私達。

 私よりも少し早く起きた彼女は、首元を隠すようハイネックのシャツを着て、頬を赤く染めながら「おはようございます」と微笑んだ。

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