第117話 今日は何の日?


「日向さん、今日は何の日か知っていますか?」


「今日? うーん……」


 今日は十一月十一日。

 私の浅はかな知識では、いくら考えてもポッ○ーの日しか出てこない。

 彼女のことだからきっと目から鱗が落ちるような……


「ふふふっ。今日はなんと、ポッ○ーの日なんです!!」


 駄目だ可愛過ぎる……

 渾身のドヤ顔。大きな瞳をキラキラと輝かせながら私を見つめてくる。

 この愛しい時間を心に焼き付けたいので、知らないふりをしておこう。


「ポッ○ーとは此の様なお菓子でして── 」


 商品説明から入る彼女。

 もう全てが可愛い。好き。

 幸せ過ぎて、只々ニコニコしながら頷くことしか出来ない。


「というわけで、今日はポッ○ーゲームなるものをしてみましょう」


「ふふっ、どうやるの?」


「こうしてポッ○ーを咥えまして、日向さんが反対側を咥えます。お互い食べ進めていき、ギリギリまで近づく遊びだそうです」


 どこで得た情報なのか……

 まぁ、嬉しそうだから私も嬉しいけど。


 ポキポキと食べ進める私達。

 鼻先が触れギリギリまで近づくと、彼女は固まってしまった。


「ん? どしたの?」


「近づいた後、何をすればいいのでしょうか……これで終わりというわけではないでしょうし……ふむむ……」


「……食べ物なんだし、味わえばいいんじゃない?」


 そう言って私達の唇は重なり、その接点は繋がった。

 柔らかくも甘い彼女の味を、ひたすらに味わう。

 チョコレートも瞳も溶けきった彼女は、おねだりをするように目を瞑った。


 少しだけ意地悪をする私。

 何もせずに優しく彼女の頭を撫でていると、大きな瞳を涙で滲ませながら彼女は甘えてきた。


「……もう一本ください」


「んー……もっと可愛くおねだりして?」


 耳まで真っ赤になった彼女は自ら一本咥えると、とびきりの可愛いを私にくれた。


「……ちょうだい?」


「もー…………どうなっても知らないんだから」


 今日は十一月十一日。

 甘い甘い、素敵な日。

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