第37話 なりきりショート・方言編


 外気温が30度を軽く超える毎日。

 お出掛けする予定は中止になり、今日は家で映画鑑賞をしています。


 日向さんが高校一年生の時の映画。

 とにかく日向さんが可愛すぎる……


「この映画、大阪が舞台の設定だったから関西弁を覚えるのが結構大変でさ」


 普段聞き慣れない言葉や発音。

 方言の一種なのだろう。

 そんな日向さんも可愛い。


「ねぇ、勝負しない?」


 日向さんは勝負事がお好き。

 よく私に仕掛けてくるのだけれど、今日は一体どんな勝負なのだろうか。


「“好きだよ”って言葉をお互い方言で言って、可愛く言えた方の勝ち。どう?」


「ひ、日向さんは何を言っても可愛いんですよ!? それに私方言なんて……」


「…………ほら、この中から選んで言えばいいから。雫の方言を聞きたいだけなんだけど……せっかくだし、ね?」


 渡されたタブレットには全国各地の方言が乗っている。

 映画の関西弁は……ふむふむ、あれはそういう意味だったんだ……

 

 発音もしてくれるタブレットは本当に優れ物で、思わず集中してしまう。


 ◇  ◇  ◇


「…………あれ? 私……ご、ごめんなさい!!?」


「ふふっ、楽しい?」


 嬉しそうに私を眺めている日向さん。

 どれ程の時間見てしまっていたのだろうか……


「素敵な顔してたよ。勉強が好きなんだ?」


「す、好きと言いますか、その……好きなのは── 」


「ストップ。続きは方言で言って?」


 という訳で、方言勝負の始まりです。 


 ◇  ◇  ◇   


 人差し指を唇に当てて方言を選んでいる日向さん。

 既に可愛いので私の負けである。


「よし、これに決めた。もし私が……我慢出来なかったら雫の勝ち。じゃあ始めるよ?」


 我慢って何だろう……

 そういえば私選んで無かったっけ…… 


 目を瞑ると空気感が変わる。

 いつもの都会的な日向さんとは違う、少しだけ垢抜けた笑顔。


「雫、好きなんさ」


 可愛い……

 抱きしめたい……


「……ふふっ、どうだった?」


「か、可愛すぎです。私の負けですね」


「もう、雫の番でしょ?」


 どんな言葉がいいのだろうか……

 そう言えば中学生の頃、節分で鬼のお面を被った詩音ちゃんが昔の漫画?の真似をしていたっけ。

 日向さんも知っているのかな?

 

 両手の人差し指で、ツノを作る。

 台詞は確か……

 

「好き……だっちゃ?」


「……そうやっていつも想像の上を行くんだから……」


「日向さん……? きゃっ!!?」


 以後日向さんのお気に入りになりました。




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