第23話 好き、だから
就寝前、ベッドの上で日向さんと写真を見ている。
子供の頃の日向さん。
可愛すぎて、ずっと見ていられる……筈なのに………
「これは……小学校の遠足の時だね。牧場に行って…………雫?」
「…………」
「おーい、雫ちゃん?」
心の中が悪い色をしている。
モヤモヤとして、切なくて。
私は……なんて我儘な人間なんだろう。
こんな事を考えていたら日向さんに……
あれ?私今何を……
「!? ご、ごめんなさい私……」
「おかえり。大丈夫?」
「だ、大丈夫……です……」
私は嘘をついたり誤魔化したりするのが苦手。
だからこれも日向さんにバレてる。
私を真っ直ぐと見つめるキレイな瞳に、嘘はつけない。
「その……可笑しな話ですよ?」
「いいよ、聞かせて」
「…………当たり前の事なんですけど、昔の日向さんの写真に……日向さんの隣に私がいないので…………少し悲しくて。可笑しいですよね」
「……可笑しくないよ」
そう言って日向さんは私を抱きしめて半回転した。
いつもとは逆で……
私が日向さんの上にいる。
顔が熱い。
私は今、どんな顔をしているのだろうか。
「雫からキスして」
震えながら優しく口をつけた。
どんなに重ねても、恥ずかしくて怖い。
でも、いつだってして欲しいし、勇気があるならしたい。
だって……
そうか……そうなんだ。
「ね、可笑しくないでしょ?」
「……はい。大好きです」
好きだから、いつだって隣にいたい。
今も昔も……これからも。
「今度連休が取れたらさ、私の実家に行こうよ。雫の事はもう言ってあるから」
「な、なんて言ってあるんですか?」
「ふふっ、好きな子が出来たって」
その言葉が嬉しくて、思わず抱きついてしまう。
その中心には、速い鼓動が……2つ。
鼻と鼻がくっついてしまいそうな程、近くに日向さんがいる。
「ねぇ、どっちがキスを我慢できるか勝負しようよ」
「……では、私の負けですね── 」
負けても幸せな勝負。
好きなのだから、可笑しい事は何も無い。
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