第22話 甘々ショート②


 今日はおまちでデートです。

 日向さんは髪を黒く染めて変装している。

 すぐに落せる塗料で、今は便利なものがあるのだと感心してしまう。


「この色に伊達メガネだったら流石に誰か分かんないよね」


 そう言いながら、嬉しそうに何かを選んでいる。

 嬉しそうな顔をしている日向さんをみると、私まで嬉しくなってしまう。


「うん、これかな。ほら、雫も」


 渡されたのは、小さな猫の耳が付いている帽子。

 同じものを日向さんは被って、招き猫のようなポーズをした。


「雫も被るにゃ♪」


 可愛いすぎてそれどころではない。

 胸の奥が疼いてる。

 抱きしめたい時って、こんな感じなんだ。

 恐る恐る帽子を被り、少しだけ手を真似る。

 

 ……真似したからって、可愛くなれる訳じゃないけれど、求めてくれるなら応えたい。

 だって、恋人だから。


「……ど、どうですか……にゃ?」


「…………」


「ひ、日向さん?」


 レジでお金を払い、手を引かれて駐車場へと向かっている。

 何か……気に障ることをしてしまったのだろうか……


「ご、ごめんなさい。私……なにかしてしまいましたか?」


 泣いちゃいそう。というか泣いてる。

 そのまま抱きしめられて、長くて深いキスを求められた。


 幸せすぎて、息をすることを忘れてしまう。


「雫が可愛すぎてさ、家に帰って抱きしめたかったんだけど……我慢出来なかった」


 否定したかったけれど、それは間違ってるからやめた。

 ただ素直に受け取る、それが私に出来る事。


「あ、ありがとうございます…………その……いつでも抱きしめて下さい。私はいつでも抱き返しますから」


「ふふっ、大好き。じゃあもうちょっとこのままでいさせて」


「…………もっと好きです……にゃ」


「……やっぱり帰ろう。早くベッドに行きたい」 


「ふぇっ!? ひ、日向さん── 」


 私は2つの意味で、猫である。

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