45.今後の見通しは
私はあの時、薬草の群生地にて、昼間にいるはずのない強力な魔物がいた事、そのドラゴンを倒した事をギルドの職員へと伝えた。
「昼間に強い魔物が現れるとすれば……ダンジョンの近くとかでしょう。しかし、あのあたりにはダンジョンなんて無かったはず……」
「ダンジョン、ですか?」
「はい。中には夜に現れるよりもさらに強い魔物が沢山いて、その中に何があるのか、未だ誰も解明できていないんです」
ダンジョン。私たちは、更なる高みをこれからも目指していくだろう。いずれ、私たちも挑戦することになるのかもしれない。
……それに、私たちなんかよりもずっと強い、あの人は……もしかすると『ダンジョン』に、すでに挑んでいるのかもしれない。
「そのドラゴンと戦った場所は覚えていますか? このまま放置しては危険なので、できる限りダンジョンの場所を特定して、近づかないように注意喚起をしたいので、協力してほしいのです。報酬はもちろん用意しています」
「報酬……というと?」
「危険な分、報酬は割に合う分を用意しますよ。ただ、戦闘は避けるので、案内するだけで結構です。おそらく小金貨1枚、またはそれ以上になるかと……」
あのドラゴンと再び遭遇してしまう危険性もあるが、案内するだけで、今日採った薬草の売値の何倍もの報酬が貰える。割の良い仕事だな、と思う。
その後、パーティのみんなにも相談したが、満場一致で『受ける』という答えだった。
***
次の日。朝からギルドの精鋭と共に、馬車でその地点へと向かう。そして、探索を続け……。
「あそこに、私たちが戦ったドラゴンみたいなのがたくさんいます」
「……つまり、あの洞窟がダンジョンという訳か。前には無かったハズなのだが……」
山の中に、洞窟があり……その周りには、あの時戦ったドラゴンのような魔物が、何体もウロウロしている。
「これ以上近づくのは危険だろう。ダンジョンの場所さえ分かれば、その地域に近づかないように注意喚起を流せば良いからな。ご協力、感謝する」
こうして、特に何事もなく、ダンジョンの捜索は終わり……。
「すごい、二日でこんなに稼いじゃったんだね……」
「今日のダンジョン探しの報酬が、聞いていたよりも多くもらえたのが大きいわね。小金貨1枚に、大銀貨5枚だから」
昨日の薬草集めで稼いだお金と合わせれば、かなりの金額だ。この分なら、生活していくどころか、少し贅沢をしても良さそうだ。
ひとまず、この異世界での生活の目処は立った。そろそろ『次』を考える頃なのかもしれない。
……元の世界に帰る方法を探すのか。この異世界を受け入れ、永住するのか。どちらにしても、いろいろと忙しくなるだろう。
「とりあえず、お金はある程度稼いだから、明日は休みにしましょう。そして、この大銀貨十枚はみんなで一枚ずつ、山分けにして自由に使って。……まだ、大したものを買えるほどじゃないけれど」
「……でも、いいの? だって、まだお金にはそこまで余裕はないんじゃ」
「大丈夫。息抜きだって大切よ? 街を歩くのにも、無一文じゃ楽しめないでしょう」
それに、いつかはまだ分からないが、まとまったお金が入る『ある依頼』を受けるつもりだってある。……それは、私たちがもともと相手にしようとしていたもの。――魔族との戦争だ。
実は昨日。高ランクのスキルを持つ人が集まった私たちのパーティに、ある依頼が持ち掛けられた。それが、魔族との戦争に、冒険者として参加する事だった。それに対して私は、
『参加する意思のある人だけで良いなら。私は、みんなを無理やり危険な場所へ連れていく事は出来ない』
例え、私が独りぼっちになってでも。みんなを危険に遭わせることは出来ないと。そう思ったから。
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