28.会議の前日 裏
「アンタにも、最低限『Sランク』という駒として、まだ価値が残ってるって言ってやってるの。黙って首を縦に振りなさい」
「……その『会議』に出て、私になんのメリットがあると?」
私たち、二年四組。そして、私たちよりも前にこの世界に召喚された、二つのクラスは――二十もの馬車の群れでの長旅を経て、『中央都市・クリディア』と呼ばれる場所へ来ていた。
私は、Sランクという強い力を持ちながらも、一切城の人間の言いなりにはならなかった。――やり方が気に入らないし、私には何のメリットもないからだ。
これまでは、私が何もしなければ、向こうも何もしてこなかった。
いないように扱われていた私だったが、何かの『会議』とやらの前日、急に私は、金髪のシスターで、私たち二年四組を統括している女性に呼び出され――
「本ッ当にイライラさせてくれるわねぇッ! 黙って縦に振ればいいだけでしょうがッ! こっちだって好きでアンタに頼み込んでんじゃねーんだよ、緊急事態だから仕方なく頼んでやってるのに、少しは立場を弁えろよッ!」
「別にあなた方が困っていても私には関係ありませんし、協力したいとも思いません。そもそも、それ、人に物を頼む態度なんですか?」
「はアァーーーー! これ以上生意気な口聞いたらブッ殺すぞクソガキィッ!」
普段の、人を下に見るような口調さえも怒りで完全に失ってしまった金髪シスターはそう言うと、私の腹に向けて、普段から持っている純白の杖を――ゴンッ! と突きつけて来る。そして、
「――『ホーリー・バインド』ッ! アハハハハハッ! アンタはもう首から上しか動かない! さあ、『会議』に出ろッ! そしたら解放してやるよッ!」
金髪シスターの魔法が私に掛けられると――まるで手足が完全に切り離されてしまったかのように、動かなくなってしまう。
私は仕方なく――口を開く。
「……分かりました。――ただし、条件があります」
「はッ、この状況で交渉だァ? 立場を弁えろって言ってるでしょうが。……まあ良いわ。聞くだけ聞いてやってもいい」
「……私と、希望者を――解放しなさい。それなら私は会議でも何でも出てあげる」
あんな所にいるくらいなら、出て行って自力で暮らしていったほうが遥かにマシだ。……そういう考えの人を、全員解放する。それが私の提示した条件だ。
「……解放、ねぇ。別にアンタは、何を言ったところで動かない、Sランクという事実しか存在理由のない駒だから、どうでもいいわ。でもね」
……金髪シスターは、ニヤリと笑うと。
「アンタと違って、少し脅せば動いてくれるような戦力まで、手放す訳にはいかないの。出ていきたいなら一人で出て行きなさい。ただし、Sランクとしての役割をしっかりと果たしてからね」
……私一人、か。
……私の元へと来てくれている人たち全員で力を合わせ、助け合って生きていければ。そう思ったのだけれど、どうやらそれは叶いそうにない。
私は悩む。私の所に来て、こんな私を頼ってくれるような人たちを見捨てて、一人でこの場所から去るのか。それとも放っておけずに、またここに残るのか。
「――『ホーリー・バインド』。何も言わないなら話は決まったわね。明日の会議、ただ座っているだけでいいわ。余計な事は一切喋らなくていい」
そう言うと、金髪シスターは、私は拘束の魔法を解除される。体に負担のかかった私は、重い体を引きずりながら、自分の部屋へと戻ることにする。
……ところで、あの金髪シスターがあそこまで焦るだなんて、一体何があったのだろうか――。
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