12.魔物の殲滅

 今回の作戦の参加者の中で一番ステータスが高い俺は、出来るだけ『敵を倒す事』を任されていた。


 以前に村の人たちだけでこのダンジョンに挑んだ時も、今回のような十人パーティで行動していたらしいのだが、それでも一回魔物と出会えばその場の状況が一気に崩れてしまうという。


 ダンジョンの魔物は、昼に外をうろついているような、普段相手にするような魔物とは別格だ。


 そこで、夜の魔物と戦えて、ステータスも遥かに高い俺がダンジョンの魔物を片付けていき、他のみんなが探索しやすいようにする。……なので、探索というよりは――


「はあああぁぁぁぁぁぁッ!!」


 剣の一撃が赤いゴブリンの首を落とす。


「うおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」


 横に薙ぎ払うように放たれた斬撃が、三匹で群がるコウモリの魔物を真っ二つに切り裂く。


「とどめだぁぁぁぁぁぁッ!!」


 まっすぐに突いた剣が、オークと言うんだっけか。豚のような鼻をした、太った人型の魔物の胸へと刺さる。



 このダンジョンの魔物はどれも厄介だ。


 コウモリは耳の鼓膜が破けそうなほどの耳障りな鳴き声を放って、その間に噛みつこうとしてくるし。きっと噛まれたら毒なんかを入れられてヤバかっただろう。


 オークはゴブリンなんかとは比べものにならない馬鹿力だ。壁に俺の身体よりも大きなヒビが入った時は背筋が凍りついた。


 しかし、何度も相手にしていれば動きも分かってきて、安定して戦えるようになってきた。ここまでの戦闘でレベルもそこそこ上がってきたのもあるかもしれない。



《体力》86/100%

《レベル》50

《スキル》味方弱化

《力》167

《守》119

《器用》175

《敏捷》147


 ついに大台、レベル50になった。やっぱりこのダンジョンの魔物は強い代わりにもらえる経験値も多いみたいだ。


 レベルがひとつ上がる事は、ステータスの上昇値が高い俺にとっては意味が違いすぎる。


 なので、レベルが7上がっただけでも、その違いがはっきりと感じられた。


 最初は速いと思っていた赤いゴブリンの攻撃も、今では軽々と受け止めて反撃へと転じることができる。


 初めて戦ったときは小さくてすばしっこく、剣を当てるのに苦労したコウモリも、少し集中すれば切れるようになってきた。


 馬鹿力のオークも、力比べはまだしたくはないが、なんとか攻撃を凌ぎ切るくらいならできるようになっていた。


 


 ……しかし。このダンジョン、広すぎる。


 整備されていて、迷路のように入り組んでいるわけではなく、持ってきた塗料を目印にして進んでいるので迷った訳ではないが、とにかく広い。


 魔物も見つけては倒し続けているが、何体倒しても減っている気がしない。


 一体、あんな強さの化け物があと何十体いるのだろう? ……いや、もしかすると何百体かもしれない。


 ……そんな事を考えているうちに、また一体、オークを見つけた。


 最初の時とは違い、動きもわかってきてレベルによるステータス上昇もあるので、立ち回りは全然変わってきた。


 俺はオークの元へまっすぐ走ると――オークの強烈なタックルをサッと避ける。


 そして、隙のできた相手を背後から剣で一突き、グサリ。


 戦うのも楽にはなってきたが、やはり数が多い。無限に湧いてるんじゃないかと思うほどだ。


 ――ん? 待てよ。俺は無限に魔物が湧き出てくるものには心当たりがあるぞ。


 赤い魔法陣。レベルを上げるのに役立ってもらったあれは、まさかこのダンジョンにもあるのか?


 オークを倒した先を進むと……やっぱり。


 そこには、前にレベル上げで使ったときよりも一回り大きな、赤い魔法陣があった。……しかも三つ。


「本当にあったな……でもどうする?」


 それと同時に……魔法陣が三つある大部屋の中には、この指では数えきれないほどの、大量の魔物が居座っている。


 あれを全て同時に相手にするのはいくらなんでも無謀だろう。


 しかし、このダンジョンの魔物が全てここから湧き出ているなら、ここを抑えてしまえば村の人たちは安全にこの中を探索できるはず。


(……やるしかないか)


 まず、大部屋に一歩だけ足を踏み入れる。すると、中の魔物たちは一斉に俺に目線を向けた。――次の瞬間、


 ――ドドドドドドドドドドドドッ!!!


 魔物たちが波のように押し寄せてくる。そこで俺は後ろへと全力で戻る。そこは、大部屋へとつながる通路だ。


「狭い通路なら、囲まれる事もないし前から来る敵だけに注意すればいい」


 ――ザザザザザザザザザザッ!!


 次々と押し寄せる赤いゴブリンやデカいスライム、オークにコウモリ、オレンジのヘビやらを、次々とこの剣で斬り伏せていく。


 十、二十、三十、四十。切っても切っても止まらない敵の波を抑え続ける。


 ――スパスパスパスパスパスパンッ!!


 そしてついに、


「お前で最後だッ!」


 大きく振った剣の一撃で、紫色の大きなスライムは一刀両断。


 数えるのも嫌になってしまうほどの、全ての敵の殲滅に成功した。


「はあ……、はあ……やっと片付いたか……」


 俺は携帯型の石版を取り出す。



《体力》86/100%

《レベル》59

《スキル》味方弱化

《力》192

《守》140

《器用》198

《敏捷》175



 今のだけでレベルが9も上がっている。あれだけの数を一気に倒したんだから当然かもしれない。


 魔法陣のある部屋へと入るが……特に変わったものは見当たらない。


「梅屋です。魔物が湧き出ている魔法陣を抑えました。これで魔物と遭遇するリスクは減ると思います」


 共鳴石でこの事を伝えた俺は、これ以上魔物が沸いても嫌だし、ついでにレベルも上げられるし……と良い事だらけなので、俺はこの部屋に湧き続ける魔物を狩り続けて、村の人たちの吉報を待つ事にした。

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