第17話 守護者爆散


「はぁ……生き返るね……」

 

 何日ぶりの湯浴みだろう。目が覚めたら宿にいて、聞くとガルドがミロスと私二人を担いで連れてきてくれたみたい。

 せっかくなのでアストライアもお湯に浸けている。


「そ、そうだね……うん……生き返る……」


「……どうしてそんなに離れてるの?」


 部屋に備わっている女湯場、私達以外誰もいないのに余所余所しく距離を保っているミロス。

 泳げるほど広いので泳ぎながらミロスへと近づく。


「どこか痛むの?」


「いや、そういうことじゃなくて……恥ずかしいっていうか……私、フィオルみたいに綺麗な身体じゃないし……」


 手で隠すその身体、隙間からは多くの傷が見える。私と出会う前には付いていなかった傷たち。

 胸の奥にチクチクと何かが突き刺さる。


「……ミロスは私達と旅をして後悔してる?」


「し、してないよ!! するわけ無い。ガルドに剣技教わってる時は凄く充実してるし……その、アストライアとも……名前で呼び合えたし…………フィ、フィオルと一緒にいられるから……幸せだよ」


 チクチクが、ふわふわと柔らかい何かに変わっていく。この気持ちをどうしたらいいのか分からなくて、でも伝えたくてミロスに抱きついた。


「ミロスと出会えて、旅ができて……一緒にいられて、私も幸せだよ。いつもありがとう」


「そんな、私の方こそ…………っ!!?」


 ミロスの傷を労るように優しく撫でると、驚いたように身体を跳ねらせて……また同じ様に距離を取られてしまった。

 顔が赤いから、湯でのぼせてしまっているのかな……


「大丈夫……?」


「だ、だだだ大丈夫……です……」


「ふふっ、なんで敬語なの?」


「そ、その……私……フィ、フィオルのこと…………」 


 真っ赤な顔のミロスの後ろにある木で作られた目隠しの上から、にょきにょきと鳥頭が現れた。

 ギョロギョロした大きな目玉がぐりぐり動くその様に、思わず声を失った。


「お主たち、随分と長湯だが大丈夫── 」


「…………ガ、ガルド!!? ここ女湯── 」


「キャー!!!? い、いくよアストライア!! 爆ぜろっ!!!!!」


 私の一振りでガルドの身体は爆散、湯場諸共を吹き飛ばしてしまい……ガルドが再生するまでの三日間、私達はここグランに滞在することになった。

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