第10話 お花畑で小休止


 ガルドの身体は完全に再生し、都へ向け次の街を目指す。

 

【違う違う!! もっと集中しろ、このタコ!!】


「ご、ごめんなさい……」


 道中、魔力制御の練習をしながら歩く。

 歩きながら……つまり、何かをしながら魔力を制御するのというのは、五才児が始める練習の一つらしい。


 私の場合、魔力は当然暴発し失敗の連続である。


【魔道士辞めたほうがいいのでは?】


「辞めま……せん!!」


 力を入れた途端暴発。

 そんな事の繰り返し。


 でも、以前とは少しだけ違う所があって……


「フィオル、大丈夫だよ。流れに逆らわずに、魔力に任せてみて」


「うん……」


 ミロスが隣にいてくれると、なんだか落ち着けて……でも少しだけザワついて……


「ほら、出来たでしょ?」


 いつもより上手く、魔力が制御出来る。

 

「ではこの辺りで休息するとしよう。なにか食べられそうな獲物を狩ってくるから、二人は休んでなさい」


 ガルドはそう言い残して森の中へ消えていった。

 私達は、小高い丘の上で言われた通り休憩中。

 そこはお花畑になっているので、花を摘んで花冠を作った。


「はい、アストライアの分ね。ふふっ、可愛いよ」


【ヤメロォォオ!!! 可愛さなど必要ないっ!!!】

 

 騒ぐアストライアを地面に突き刺して、今度はミロスの分を作る。

 私の周りにはいつも通り動物たちが集まってきた。


「あなたも欲しいの? ちょっと待っててね」


 栗鼠と兎が催促してきたので、先にその子たちへ。


「すげぇ……ホントに動物と会話出来るんだ……」


「はい、これはミロスの分だよ」


「わ、私はいいよ……可愛いのとか苦手だし……」


【オイ!! ヤメロッ!!!】


 小鳥の家族がアストライアに止まり、巣を作り始めた。

 それがなんだか可愛くて、つい笑ってしまう。


「ふふっ、良かったねアストライア」


「…………やっぱり私にもちょうだい」


 少し不機嫌そうな顔をするミロス。

 何か気に障る事、しちゃったかな……


「……どう? 似合う……?」


 照れながらもじもじとしている姿に、胸の奥が疼く。

 気温が高い訳でもないのに、顔が熱い……


「凄く可愛いよ。ミロスを見るとドキドキしちゃう。不思議だね」


「そ、そんな事…………その……可愛い方がフィオルは好き?」


「ミロスはミロスだから、可愛くても格好良くても好きだよ?」


「そ、そっか……私もフィオルに花冠作ってあげる。ちょっと待ってて」


 そう言うと、ミロスは器用に手際良く花冠を作り出す。

 何だろう……凄く嬉しいな。


「絶対似合うよ。ほら、ね? 滅茶苦茶…………」


「……ミロス? きゃっ!」


 ミロスは立て膝をついたまま、私を強く抱きしめた。

 突然の事で、頭が回らない。


「ごめん……もうちょっとだけこのままでいさせて」


 ドキドキが収まらなくて、胸がつかえる感覚。

 只々、頷くことしか出来ない。

 でも……ドキドキしてるのは、私だけじゃなかった。




【おい、いいのか? 姫様にあんな事したら死罪だろ?】


「尊いので問題ないでしょう」


【そうか…………そうか?】


「そうです」


【そうか……】

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