第8話 ゼロ思考


 初めての洞窟。

 真っ暗闇だし、変な音が聞こえるし、嫌な感触が手に…………!!?


「キャーーー!!?」


「よさぬかフィオル!! 闇雲に杖を振るな」


【ヒャッハー!! 全部ぶっ壊しちまえ!!!】


    ◇


 私が杖を振り回し魔法を使ったせいで、洞窟の天井に巨大な穴が空いた。

 お陰で明るくなったよね。


「ごめんなさい……」


「もう良いから、泣くでない。お主達に何事もなくて良かった」


「しかしフィオルの魔法はすげぇな。どうなってんだ?」


「……この世界に魔法が生まれたのは、もう数千年も昔の事。とある8人が突如魔法を使えるようになった。そこから枝分かれし、今の様に殆どの人間が魔法を使えるようになったそうだ。そして、始まりの魔力と言われる8人の魔力は、持ち主を変え続け今もどこかで生き続けている」


「その魔力がフィオルの?」


「うむ。その魔力はそれぞれ力の性質が異なり、番号付けされている。そこから肖って、持ち主は番号持ちと言われているが……その性質から見て、フィオルの番号は0。破壊を司る魔力だ」


 破壊を……司る……


「1番からじゃないんだ?」


「うむ……少々特殊でな……その……」


 珍しくガルドが困っている。

 何か言い辛い事があるのかな?


【くだらん。その魔力はな、魔物の源だ。そいつのおかげで魔物が生まれた。貴様らにとっては諸悪の根源だ】


 私の魔力が?

 もしかして私がこんなもの持ってるから、村が襲われて……

 もしも私がいなかったら今頃皆は…………


 心の奥底が強く締め付けられる。

 どうしたらいいか分からなくて、私はその場から逃げた。


    ◇


「っ……ぐすん……どうしよう……私このままここで死んだほうがいいのかな」


【おう、死ね死ね。楽になるぞ】


 私がいなくなればこの力は……あれ?

 いなくなったら、また誰かにこの力が渡って……もしこの力を悪用する人だったら……?


「……そうだよね、私だけ楽になんてなれないよね。ありがとう、アストライア」


【どう解釈したらそうなるんだ?】       


 せめて、私が生きている間はこの力を誰かの役に立てたい。

 魔法を使って、人の為に働く事が私の夢だったから。


【ホレ、その魔力に誘われて来たぞ】


 薄暗い洞窟の奥底から、嫌な気配が立ちこめる。

 でも暗くてよく分からない。


「ねぇアストライア、明るくする魔法って無いの?」


【自分で考えろ。低脳】


 うーん……

 炎も雷も、前に失敗しちゃったよね。

 ほかに明るくする方法……

 

 そういえば、アストライアが虹を空に放った時、あの虹はキラキラと光り輝いていた気がする。 

 もしかして……


「よ、よーし。いくよ、アストライア」


【へいへい】


 力を身体の奥底から湧き出すイメージ。

 案の定私の周りを虹色の魔力が渦を巻き始めた。


 ここで魔力に力を込めれば……


「えいっ!!!」


 アストライアを地面につけた瞬間、魔力が光り輝いた。


「や、やった!! 出来たよ、アストライア」

 

【ついでに前を見ろ。30はいるな】


 明るくなった洞窟内、目を凝らすと前方から気味の悪い化け物達がこちらに向かってきている。

 凄い数……ど、どうしよう?


「ア、アストライア……」


【その周りの魔力を前方一点に集中させろ】


 言われた通り、杖を前に向け一つの場所へと虹色の光を集める。

 やがてそれは小さな玉になった。


【よし、それを前方に放て】


「う、うん……えいっ!!」


 フワフワと浮かびながら、小さな玉は魔物達に向かっていく。

 その光に誘われるように、魔物達が群がる。

 魚に餌を与えた時の様な光景。


「い、今の内に逃げないと」


【バカか? 殲滅させる絶好の機会だろ。やれ】


「でも……私調整とか出来ないし……」


【やらなければいつまで経っても出来ないぞ。それでいいのか?】


 それは……その通りだ。

 私はバカだな……


「よーし、行くよ!! 爆ぜろ!!!」


【バカかっ!!? こんな狭い所で── 】


 突然目の前が明るくなったと思ったら、それは私の魔力が大爆発を起こしたからで、次に目を開けたら山半分が消し飛んでいた。


「空が青いなぁ……」


【脳味噌が詰まってないのか!!? 何を考えてるんだ!!】


「な、なにも考えていませんでした……」


【……】


「……」

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