第7話 冒険の始まり


「はぁ!? フィオルが姫様!??」


「うむ、故にお主の行為は斬首に当たるのだが……フィオルの懇願により、今回だけは見逃そう。どういった意味か分かるか?」


「……」


 ミロスは何も言わずに、私に向かって胸に手を当てている。

 これは一体どんな意味があるのだろうか……


【無知な犬にも分かるように口で言え。クソガキ】


「くそっ、言いたい放題言いやがって…………フィオル、私の命をあなたに捧げる。何があろうとも、私があなたを守るよ」


「な、なんで? そんな物騒な事言わないで?」

 

「この国の罪人は、各地にいる王家の者によって裁かれる。斬首される際、その命を王家に差し出すという意味で胸に手を当てるのだ」


「……そんな事、必要ないよ? 私達……友達でしょ?」


【出たな、頭お花畑め】


「……習わしとかさ、そんなの関係なくフィオルを守りたい。強くなりたい。戻る場所もないし、私はもう……」


 自分の故郷がある方へと目を向け、歯を食いしばっている。

 全てを失って…………少しでも、生きる意味を感じれるのなら……


「じゃあ……お願いしよっかな。守ってね、ミロス」


 握手をして、笑顔でお願いする。

 笑顔が一番だよね。  


「っ……ま、任せてよ!」

 

「うむ、では行くとしようか」


    ◇


 私達人間は、魔物が住む場所とは離れた所に町を作り発展させてきた。

 その周囲一帯は、大昔の大魔道士が刻んだ呪文により、魔物が近づけないようになっている……んだって。

 

 ミロスのいた村から2日歩いた場所にある山脈地帯。

 この辺から呪文の効果は薄くなり、魔物が出てくるみたい。


「都ってこっちだっけ? 街道を沿ってけばいいんじゃないの?」


「この山を抜けたほうが早い。それにお主達の訓練も兼ねておるからな。特にミロス、強くなりたいのだろう?」


「おう! どんと来なよ!」  

 

 前向きに、明るく振る舞うミロス。

 私もこれくらい強くなりたいな……  


 山脈を抜ける為の長い洞窟。

 こういった閉鎖的な空間は、魔物の巣窟になっている事が多いらしい。

 ちょっと怖い。


「おーし、ガンガン進むぞー!」


「ゆ、ゆっくりね?」


 いよいよ、冒険の始まり。

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