第6話 少女、ミロス


【─── 】


 アストライアの声が聞こえる。

 何度も何度も、私を呼びかけていた。


 虹色に輝く暖かな光。

 届きそうで届かない。

 

 これは私の……


「……あれ、私何をしてたんだっけ」


「フィオル!! よかった……よかった……」


 ガルドが私を抱きしめる。

 クチバシが肩に当たって痛い。

 目がギョロギョロして怖い。


「ガルド……そっか、私刺されちゃって……」


 お腹を見ると、傷口が虹色に輝いている

 少しずつ治っているのかな……?


【まだ動くな。じっとしてろ】


「アストライア……ありがとう。アストライアが助けてくれたんでしょ?」


【知らん。黙ってろ、犬】


 言われた通り、大人しくする。

 焚き火の奥を見ると、村にいた子が俯いている。


「ねぇ、そっちじゃ寒いでしょ? こっちにおいでよ」


「……」


 終始俯きながら、のそのそとこちらへ来た。

 目の下が真っ赤。泣いていたのかな……


「私の名前はフィオル。あなたは?」


「……傷、大丈夫………?」


「ふふっ、大丈夫だよ」


「な、なんで笑ってられるんだよ……私は……キミを殺そうとしたんだよ!?」


「だってあなたは悪くないもの。そうでしょ? 少しは……落ち着けた? こっちの鳥 頭はガルド。魔物じゃなくて、魔法の力でこんな顔になってるんだって。それから、この杖はアストライア。私とメギスなんだよ。ね、アストライア」


【黙ってろと言っただろう。死ぬぞ?】

                      「口が悪い杖だな……普通、術者の方が上だ    ろ?」


【ハッ!! 単細胞め。同じメスガキでも我が下僕とは品が違うな。貴様は小汚い野犬だ】


「なんだと!!? へし折ってやる!!」


 騒ぎ合う二人。

 こんなに賑やかなのは久しぶりで……

 つい口元が緩んでしまった。


「……なんで笑ってんの?」 


「誰かと言い合えるって、良いなって思ったの。それって、凄く幸せな事なんだよね」


「…………私の名前はミロス。謝って済むモノじゃないんだけど……その……ごめん」


「ミロス……良い名前だね。私達、都に向かってるんだけど……もしミロスが良ければ一緒に行かない? みんな一緒だときっと楽しいよ。ね?」


【コイツは頭の中まで花畑だな……】 


「彼女の良き所です。穢れなき心はこの世界の宝ですから」 


 賑やかに火を囲む。

 安堵した途端、瞼が重くなってくる。


「寝たか……お主達、フィオルが── 」


【失せろ!! 溝犬め!!】


「うるせーバカ!!」


「……子供の喧嘩だな」

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