第4話 特別な組み合わせ


【さぁ謝れ!! この牝犬め!!】


「うっ……うぅ……えーん……ごめんなさい…………」


【な……何故泣く!? 泣くな牝犬!!】


「牝犬じゃないもん……うぅぅ……」


【おい守護者!! どうなってる!!?】


「あなたの声を聞く者です。理解して下さい」


【こんな奴が!? おい牝犬! 名前を言え!!】


「……牝犬じゃないもん。フィオルだもん……」


【あー!! 泣くな!! フィオル、我を前に構えろ】


「こう……?」


 言われた通りにすると、禍々しい魔力が渦を巻く。

 前方から来る魔物の周囲を魔力が囲み、その中で大爆発が起きた。

 

【破壊、これぞ魔法の醍醐味よ!!! フィオル、貴様中々の魔力を持ってるな。流石に我の声を聞くだけの事はある。さぁ、全てを破壊しようではないか!!!】


「そんな酷い事……出来ないよ……えーん……」


【だ、だから何故泣く!!? 泣くな!! 理由はよく分からんが、貴様に泣かれると何故か困る!!】


「彼女はユイスン。しかも直系です。だから言ったでしょう?理解して下さいと」


【守護者如きが偉そうだな。塵にしてやろうか? おいフィオル、魔力を込めろ。コイツを挽肉にしてやる】


「挽肉……野蛮過ぎるよ……」 


【な、泣くな! ほれ、一振で虹を咲かせよう!! 我を振ってみせろ】


 杖を振ると虹色の魔力が渦を巻き、空で弾けた。

 空に虹が咲いている。


「わぁ……凄い……」 


【漸く落ち着いたか……まぁ確かに……よく似てるな】


「私は目が見えませんが……リリ様同様、優しい顔をしているでしょう?」


【ふん、甘っちょろいだけだ】


 似ている……リリ様ってもしかして私の……


 ……聞きたいけど、なんとなく聞く勇気が無くて。

 でも私の親は爺ちゃんと婆ちゃんだから今更……


「では旅の準備を再開しよう」


    ◇


 ブーツにローブ、そして軽くて大きな盾を背中に背負った。

 うん、なんだか冒険者っぽいね。


「どう? 似合う?」


「うむ、きっと似合っているだろう。目が見えぬのが残念だ」


「あ、そっか……ねぇアストライア、どう?」


【気安く話してくるな、犬】


 冷たい言葉に自然と涙が溢れてくる。


【なっ……似合っている!! 似合っているから泣くな!!】


「本当……?」


【本当だからもう泣くな……】


「へへっ、ありがと」


「では旅を続けようか。心の準備は良いか?」


「うん。行こう、アストライア」


【気安く呼ぶな、メスガキ】


「ガキじゃないよ、フィオル。覚えてね」


【ケッ】


 少し素直じゃない杖で、口が悪い杖だけど、私達は世界で一つだけの特別な組み合わせ。

 不思議と手に馴染むアストライアを握りしめて、遠い都を目指す。

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