第2話 和装の子
身長は百七十センチくらいで、年は私たちと同じかな。
明るい茶髪をポニーテールにしている。
黒一色の和装……、剣道着? なんだけど、いろいろ新しいって感じがする。
新しいっていうのは、つまり、近未来的だから。
だって、着ているのは光沢のある生地だし、草履は最新の機械が編んだみたいに、綺麗に加工がされたものになっている。
上は合わせだけど、肩から袖の部分がなく、厚手ながら速乾性あるように思うから、袴姿なのにどこかスポーツ的な印象がある。
そして、左腰には鞘に納まった刀。
柄が樹脂製らしくSF映画なんかに出てきそうなもので、刀身も合金とか光になってそう。
ただ、顔だちとかから日本人の雰囲気はあるわね。
「──瑠羅、このお方がそうか?」
その子が視線をほむらちゃんに向けたまま、瑠羅ちゃんに言った。
はっきりしたいい声ね。
「ええ、そうよ。例のやつ、くれないどころか、こっちのを奪うつもりみたいよ」
「なるほど。ならば、やることは一つだな」
一歩前に出る和装の子。
「拙者の名は
武人のような堂々とした宣言。
「ああ、いいぜ。戦って勝ったやつが得る。分かりやすい」
了承して構える、ほむらちゃん。
どのみち、球体を狙っているんだから戦いは避けられないわね。
なんか利羅ちゃんは、球状の物って言ってたけど、向こうではそう呼んでいるのかな?
「よろしい! 瑠羅!」
「わかってる」
ぶっきらぼうに答えながら、瑠羅ちゃんはパンッと音を出して両手の平を合わせた。
すると瑠羅ちゃんのツインテールの先から白い光の髪が伸びて、足元まで届いた。
そして、立方体型に結界が張られ、建物以外のアスファルトが敷き詰められたところに展開した。
立方体って分かるのは、結界内にいる私たちのところは明るく、
「明るい方が戦いやすいでしょう。それとも暗い方が良かった?」
「俺はどっちでもいいぜ」
瑠羅ちゃんの問いに答えるほむらちゃん。
配慮したことを言ってるけど、結界ってことは逃がさないってことよね。
それに瑠羅ちゃん、合掌のポーズをしたままだけど、そうやって結界を維持しているみたい。
直接、戦いに加わることはなさそう。
「それではよろしいか!」
「ああ……」
「参る!」
確認すると、利羅ちゃんは右手で柄を握り、一気に迫った。
鋭い横の一閃。
しゃがんで避けるほむらちゃん。
同時に、足元から炎を噴き上げさせた。
「む!」
思わぬ反撃に、利羅ちゃんは後ろへ跳んだ。
刀を両手で持ち、素早く体勢を整えて斬りかかる。
「せい!」
振り下ろす刃に対し、ほむらちゃんも後ろへ跳んで回避。
ただし、炎のおまけつき。
利羅ちゃんは、空中で広がる炎を全身で浴びた。
メラメラとした赤い炎が利羅ちゃんの身体を立ち昇っていく。
「ふん!」
だけど利羅ちゃんは顔色一つ変えず、もう一度上げた刃をそのまま真正面に振り下ろした。
その勢いでかな、全身の炎が一瞬で払われた。
「隙のない攻撃、素晴らしい!」
なんか絶賛しているけど、それで炎、消えるの?
いや確かに炎は消えているし、気合いで?
服も燃えた感じはなく、火傷も見られない。
ほむらちゃんが、そういう炎を使っているからでもあるけど、熱も含めて何かしらの力で保護されているんだわ。
そして、利羅ちゃんの刀を見ると、透明ね。
まあ、正確にはちょっと緑がかった透明で、プラスチックみたいに見えるけど、オレンジ色に光る文字が見えるから魔法的に強化されていると思う。
髪もポニーテールの先から白く光る感じで伸びていて、瑠羅ちゃんと同じようになっている。
なんだろう。
二人とも、能力発動とか戦闘状態になると、こうなるってこと?
ということは……。
利羅ちゃんも人間ではないのかもしれない。
「この炎じゃ利かねえみてえだな」
呟くように言うほむらちゃん。
いま使ってる炎では利羅ちゃんに、はっきりとしたダメージになっていない。
それは、ほむらちゃん本人が一番分かっている。
「違うやつでいくぜ」
そう言うと、今度は、ほむらちゃんが仕掛けた。
大きく右手を振ると、路面を滑るようにして走る炎が現れた。
ほむらちゃんの腰くらいまであるその炎は、力強く輝く不動明王の炎。
一気に利羅ちゃんへ接近する。
「むっ!」
直前、利羅ちゃんは横へ跳んだ。
「そこだ」
右手をグッと握るほむらちゃん。
すると炎は変化して幾つものロープみたいなものになった。
炎のロープは利羅ちゃんを左右から挟み込み、集団で捕えようとする。
「
無理な体勢ながらも、刀を両手で持って技を振るう利羅ちゃん。
刀身とその両側、合計三つの斬撃を一回転しながら繰り出して、炎の包囲を突破した。
それも束の間。
炎は頭上に集まって一筋の剣となって降ってくる。
ほむらちゃんとともに。
「うおおおおー!」
両手を合わせ振り下ろす
「
振り上げ迎えうつ
空中で激突し、押し合いになる。
「く……」
「む、む……」
最初は拮抗していたけど、利羅ちゃんは押し上げる体勢だから、だんだん力がいれづらくなってくる。
「む……」
じわりじわりと焔剣に押されていく。
「む、むええぇい!」
かけ声と同時に魔力で全身を瞬間強化し、焔剣を受け流して逃れる利羅ちゃん。
バックステップで距離をとり、中段に構える。
ほむらちゃんもきれいに着地しながら炎を消して、構えた。
「やるな」
「あなたも!」
喜んでいるかのように言い合う二人。
ほむらちゃんの実力は知っているけど、利羅ちゃんも相当なものだ。
「じゃあ、第二ラウンド、いくぜ!」
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