三章 個人探求者
第1話 セーラー服の子
──私の意識は
「ある意味、すげえな」
そう呟きながら辺りを見回すほむらちゃん。
今は夜の十時くらいで、ここは……、廃工場に来てるわね。
使われなくなってから五年は経つんじゃないかな。
敷地は木々に囲まれ、管理者が不在なのをいいことにフェンスの上から枝を伸ばして侵入しようとしている。
金属加工なのか分からないけど、シャッターが閉じた大きな建物があって、大型のトラックが二台は楽に行き来できる駐車スペースと車二十台は停められそうなアスファルトの路面がある。
私、お祖父ちゃんの土木会社を参考にしちゃうけど、学校の体育館でいったら六面分くらいね。
つまり、とんでもなく広い場所なんだけど、そのど真ん中に球体の反応がある。
誰かが持っているわけでもなく、落ちているわけでもない。
ほむらちゃんの身長と同じ、百五十センチくらいのところで浮いているかんじ。
ただ、ユキちゃんや香澄さんのときと違ってぼんやりしている。
まるで、とういうかここを基点とした別の空間に球体があるみたい。
本当だったら、空間が違うんだから遮断されて、気配すら感じることもないと思う。
それでも球体は存在を示している。
だから、ほむらちゃんが「ある意味、すげえな」って言ったわけね。
「……」
無言で静かに歩み寄るほむらちゃん。
操業していない工場だし、防犯カメラとかのセキュリティは大丈夫だとしても、夜だから真っ暗。
ライトとか灯りがほしいところだけど、ほむらちゃんはそれら使わずに行く。
夏だから虫さんが寄ってくるとかじゃない。
別の空間にあるという事は当然、その空間を利用している人がいるといこと。
いい人かどうか分からないし、人なのかも分からない。
警戒しておいた方がいい。
──球体から三メートルほどのところまで近づくと、球体そばの空間から女の子が現れた。
明るい黄色の髪、レモンイエローかな。
その髪を青のリボンでツインテールにした、セーラー服を着た女の子。
セーラー服といっても学校の制服というよりはファッションで着るような感じ。
黒が基調で青のラインが入っているから、そう見えるんだと思う。
背はほむらちゃんより低いし、年は……、十五歳くらいかしらね。
そして、蒼い瞳に白い肌。
外人さんかな。
「ようこそ、と言った方がいいのかしら、この場合」
腰に手をあてながら、その子は言った。
「私の名前は
なんかツンデレな雰囲気ね。
「俺か? 別に名乗るほどのもんじゃねえよ」
相手が何者か分からいから、様子を探るように振る舞うほむらちゃん。
「ふーん」
こっちが名乗ったのに答えないなんて失礼ね、といった顔で見てる。
「じゃあ、あなた。赤いズボンをはいているから、赤ちゃん、て呼んでもいいのね?」
「!?」
!?
驚いた。
その発想はなかったわ。
「それで呼ばれちゃたまんねえな。俺は、ほむらだ」
ほむらちゃんも、やれやれといった表情で名前を言った。
「最初からそう言いなさいよ。で、ほむら。あなたどうしてここへ来たの?」
「
「友達を?」
「ああ、そのために必要なものがここにあるはずなんだが……」
言いながら瑠羅ちゃんの横にある球体を見るほむらちゃん。
「?」
視線を感じ、球体に顔を向けるけど、瑠羅ちゃんには見えていないようね。
球体を持っているわけじゃないから当然といえば当然なんだけど。
「ま、いいわ。私はあなたから動機を聞いてきなさいと言われたきたの」
向き直って言う瑠羅ちゃん。
うん?
言われたってことは誰かの指示があった?
「それと、私はよく知らないけど、ほむら、あなた特別な物を持っているんでしょう? それをちょうだい」
そう言って瑠羅ちゃんは右手を差し出した。
「特別な物か、たくさん持っているからな。どれの事を言ってるんだ?」
「むう。ここ二、三日の間に現れた丸いもので、いまあなたが二個持ってる物よ!」
ほむらちゃんが
そこまで具体的なことが言えるってことは、やっぱり残りの球体と関係あるみたいね。
「心当たりはあるが、それと同じ物がここにあるはずなんだ。何か知らないか?」
早速、ほむらちゃんが探りを入れる。
「ええ、あるわよ。今、調べてる」
「調べてる?」
「そう。とんでもないエネルギーの
「父様?」
「私たちを造ってくださったのよ。あ、そう言えば動機を聞いて、手に入れてくるんだった」
ちょっと自慢気に話していた瑠羅ちゃん、指示を思い出して口に手を当てた。
もうちょっと情報が得られそうだったけど、なかなか気になることを言ってたわね。
父様とか造ったとか。
造った、ていうことは瑠羅ちゃん、人間じゃない?
「というわけで、ちょうだい!」
あらためて右手を差し出す瑠羅ちゃん。
交渉とか無しで、もらう前提なのね。
「いや、やれねえなあ。もう一つ言えば、その父様が調べてる物に興味がある。恐らく、そいつが目的のものだ」
「なに、奪うってこと?」
「そいつは元々、友達のだからな。返してもらう、つうのが正解だ」
「……」
「……」
目を合わせたまま動かない二人。
──すると、もう一人、女の子が現れた。
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