両親は世界一周旅行に出かけることに
引っ越しは引っ越し屋が手早く済ませてくれた。
予想通り新居は滅茶苦茶な豪邸だった。場所は高級住宅街だったし、部屋も何部屋あるんだってくらい多かった。外装も内装も綺麗だし。
土地建物つきで2億~3億くらいはしてても不思議ではなさそうだ。つまりはあれか、鈴はビッチではなくどちらかというとお嬢様だったのか。パパ活やエンコーはやる必要性自体がなさそうである。
ただこいつがビッチではないという保証にはならない。この手の女、それなりに男の需要があるのだ。DQN男、数人とヤりまくっている可能性があった。
ありえそうだ。そういえばどこかの声優がそんな感じだったな。誰とは言わないが。一時期話題になったアニメのメインヒロイン。
ともかくとして俺達の引っ越しが完了した。そして新居での生活が始まったのである。
前の自分の部屋よりも広い部屋になった。俺の部屋はオタクグッズが所狭しと並べられた。アニメポスターや人気絵師の描いたタペストリーで飾られるようになった。
「よかったぜ……これだけ広い部屋なら、グッズをもっと買っても大丈夫だな」
ベッドでくつろぐ俺は新生活を純粋に楽しんでいた。これで、あの天敵と同じ家で暮らさなければならない、という不安を除けば。
新生活には楽しみ以外の何物もなかったのである。母さんの連れてきた義父――つまり、あのビッチ(天敵)の父親はよさそうな人だった。仕事もできる上に俺に優しいし。やはり経営者だけあるのかもしれない。人を惹きつけるだけの人間的魅力があった。
何の不安もない。あのギャルが義妹という事を除いて。
しかし、ここで一つ大きな問題が起きる。
「え? 旅行に行く?」
「ええ……結婚式は挙げる予定はないんだけど、旅行には行こうと思っているの」
母さんは俺に告げる。
「どれくらい?」
「大体一か月くらいかしら。大丈夫そう?」
横には俺の義妹となった鈴がいる。鈴はあれからまともに会話をしていない。俺が家に来てからというもの一言たりとも。俺を避けているようであった。
「い……いいんじゃないか。それは」
「ちょ、ちょっと待ってよ! パパ! こ、こいつと二人っきりになるって事!」
鈴は珍しく口を開いた。俺がいる前ではあまり喋らない印象だったが。
「鈴……これから家族としてやっていくんだ。『こいつ』呼ばわりしてはだめだぞ」
「そ、それはそうだけど……。こいつ、男なのよ。わ、私に変な事してきそうじゃん。怖いわよ」
「安心しろ。鈴」
「何よ?」
「俺は三次元の女に一切興味がない! 特にお前みたいなギャル相手には余計にない!」
俺は胸を張っていう。
「そ、それはそれで……なんかむかつくんですけど、ふん」
鈴は顔を背けてソファに座った。
「どうしても嫌だって言うなら、旅行をやめるか。鈴にはホテルを取ってそこに一か月泊まってもらうが」
「い、いいよ。別に。パパにそこまでの迷惑かけらんないし」
こうして母と義父の二人は新婚旅行へ行った。再婚同士だから新婚というと違和感があるが。仕事の予定を調整し、そして旅行へと旅立っていった。帰ってくるのは一か月後だ。
つまり俺はこのギャルと一カ月、二人っきりで生活をしなければならないという事なのである。
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