義理の妹との出会い

とびっきりめかしこんだ母親と俺は顔合わせに向かうのであった。


向かうのは高そうな料亭である。当然のように俺も母に合わせて、それなりにまともな恰好をする事になる。


一体、どんな人が来るんだろうか。とはいえ、俺はあまり事前に情報をあまり聞かないようにした。


「相手がどんな人か、連れ子さんがどんな人か聞かなくていいの?」


 俺はあえてそこら辺の情報を聞かないまま顔合わせの機会を迎える事になる。


「それは知っちゃうと……回すより前にガチャの判定がわかってしまうみたいで、しらけるじゃん?」


「ガチャ? ……何を言っているのかしら。何を言っているのかわからないけど、くだらない事を言っている事だけは理解できるわ」


 流石は母親である。俺の事はよくわかっていた。


 俺達は車を降りて、その料亭に入っていく。料亭には女将のような人がいた。


 一体、この会食はいくらするんだ? 想像もつかない。もしかしたら一人一万円くらいするかもしれない。


 一枚万円あれば3000円のガチャが30連も回せるぞ! 30連も! なんと勿体ない話だ!


 俺はそう思ったが、世間一般でいえばただのゲームのデータでしかないソシャゲのガチャに1万円ぶっこむ方が勿体ない、というのが通常の感覚かもしれない。


 俺はドキドキしながら会食会場についた。いかにも上品そうな和風なスペースである。


 俺達はそこの席につく。座敷であった為、どうやら正座しなければならない。正座は苦手なんだよな。だって足が痺れるじゃないか。


 なんで世の中にあんな座り方があるんだ。わけがわからない。


「相手はいつ来るんだ? 母さん」


「そうね……少し早く着きすぎたから後30分くらいかしら」


「30分か」


 微妙に長いな。1話アニメが見れるくらいの時間か。俺は足を崩す。30分も正座などできない。していたら足が痺れて立てなくなる事は間違いなかった。

 

 相手方が来た瞬間、正座をすればいいんだ。俺はそう思っていた。


 そのうち、襖の開く音がした。


 男性――母と同じなら40程度の中年のはずだが、整った顔と体格をした男性が姿を現す。


 それに続いて、一人の少女が姿を現す。可憐な少女であった。着物を着ているため、ボディーラインはいまいちはっきりとはわからないが、それでも出るところは出ていて、引っ込むところは出ている感じだった。


 よかった。ここにきて、俺の義妹がデブスであるという可能性は消えたわけだ。俺は安堵の溜息を吐く。


 より……次は、俺の理想通りの義妹かどうかだ。俺の理想は清楚系で重々な義妹だ。それでお兄ちゃん想い。毎朝俺を文句言いつつも、優しく起こしてくれるような、それでいて毎日、弁当を作ってくれるような。


 そう、例えるなら昔プレイしたギャルゲーの可憐ちゃんみたいな義妹。それが俺の理想だ。


 そんな義妹が現れてくれる事を俺は祈った。


 ――だが、その予想は儚くも打ち砕かれる。


「なっ!? なんだって! お前は!」


 俺は思わず叫んでしまった。予想だにしていない人物が姿を現したのである。間違いない。着物を着て、めかし込んでいるがそれでわからなくなるような関係ではなかった。


 天音鈴(あまねりん)。


 俺の義妹になるはずの連れ子が現れたのである。


 鈴が現れた事に俺は激しい動揺と驚きを覚えたのだ。


 

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