ゴブリンの巣を攻略

 俺達はゴブリンの垂れ流した血を辿った。


「よし……間違いない、ここがゴブリンの根城だ」


 ルーネスがそういう。


 血を辿っていった先、森を抜けた先にあったのは洞窟だった。ゴブリンはこういう洞窟を好む事が多い。


「間違いないな。ゴブリン達はこの中に逃げ込んだと思って間違いない」


「……どうします?」


「本来なら油でも流し込んで、火炙りにしてやりたいところだが……」


 ルーネスは躊躇いを見せていた。


「相手がゴブリンって事はよ。まあ、見れた様じゃないかもしれないけど、攫われた女連中だっているはずなんだよ」


 俺はその言葉にカレンの姉であるアンナの姿を思い浮かべた。アンナはゴブリンに攫われたと言っていた。生きている可能性も僅かにあった。ただもう、心は死んでいるのかもしれないが。


「どうするよ? アレクの兄ちゃん」


「生きている者がいるなら……助けられる人がいるならその手段はとるべきではないと思います」


「……そうだよな。けど、それで俺達の作戦成功確率が下がるとしてもか?」


「……それは」


 正直に言えば悩む。


「けど、例えそうだとしても罪のない村人達を……その女性たちを作戦のために犠牲にするべきではないと俺は考えます」


「そうか。良い答えだ。だったらその自分の判断を信じようぜ。大丈夫だ。きっと上手くいく」


 そうだ。それに火炙りにするとしても、あまり有効な戦略ではないかもしれない。洞窟が地下へ伸びていくと仮定すると、火や煙は上に上がっていくものなのだ。地下の奥底まではいくことはない。逆に退路を断つ事になりかねない。


「突っ込むぜ。野郎共。覚悟を決めろよ。何せ俺達は冒険者だ。死ぬのが怖くて冒険者ができるかよ! なぁ!」


「「「はい! その通りですリーダー!」」」


「よし……気合十分だな。突っ込むぜ。アレクの兄ちゃん」


「ええ。わかりました」


 俺達は覚悟を決めた、そしてゴブリンの巣に突入してくのである。


 ◇


(ゴブリンキング視点)


「ゴブリンキング様!」


「ん? なんだ!? 何の用だ!」


 ゴブリンキングの前にゴブリンリーダーが現れた。


「略奪班が帰ってきました。カイネ村からの略奪行為は失敗したそうです」


「な、なんだと!? なぜ失敗したのだ!?」


「ひ、ひいっ! そ、それはなんでも村は冒険者を雇ったようです」


「ちっ。冒険者か」

 

 金で命を賭けて闘うならず者たちの事である。金……。ゴブリン達にはない制度であった。そういう交換手段を人間たちは持っていたのだ。奪い合う事ではなく、共栄するためにに、その『金』というもので社会生活を成り立たせている。


 だが、ゴブリン達は奪うだけの存在だ。欲しいものがあれば奪う。食糧も、女も、武器も。だから理解できない事ではあった。


「ちっ。村の男連中ではどうにもできないから、金で冒険者を雇ったのか、あの村は。そうなる事は想像するのも容易い事ではあるな」


 ゴブリンキングは予想ができていたという事もあり、大して動揺はしていない様子だった。


「いかがしますでしょうか!?」


「決まっているであろう! 叩き潰せ! 我等の王国を荒らした罪! 死を以って償わせるのだ!」


「はっ! ゴブリン兵団! 出撃します!」


 こうしてゴブリン軍とアレク達、冒険者パーティーとの熾烈な戦いが繰り広げられる事となる。

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