炎魔法を覚えゴブリンを焼き払う
「く、くそっ!」
キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!
いくら精霊術のバフ効果があるとはいえ、多勢に無勢だ。ルーネスは不意打ちをされる。他のゴブリンに気を取られていたのだ。
「はあああああああああああああああああああ!」
俺は剣でゴブリンを斬り裂く。
「サンキュ、アレクの兄ちゃん!」
「如何せん、こう数が多いと厄介ですね」
「ああ。その通りだ」
「魔法を使える仲間はいないんですか?」
「残念ながら魔法使いは希少価値が高い冒険者なんだよ。金がかかるから仲間にできてねぇんだ。ここにいるのは基本的に物理攻撃しかできない、ファイタータイプだけだと思っていい」
「そうですか……」
そうなると厄介だ。俺の覚えているのは技スキル『ドラゴン斬り』程度だ。ドラゴン斬りはドラゴン相手への特攻効果があるだけだ。単体攻撃でもあるし、当然のようにゴブリン相手には有効ではない。
ここはやはり面攻撃ができる魔法攻撃が必要だ。しかし、ゴブリン相手では思うように経験値(EXP)が溜まらない。このままでは埒が明かなかった。
――と、その時であった。
『ご主人様』
「ん? どうした?」
精霊が語り掛けてきた。
『経験値を運んできたよ』
「ナイスだ! 流石俺の頼れる相棒!」
俺は両手を叩いて喜ぶ。俺は経験値を受け取る。俺はレベルアップした。
LV20。HP100。MP40。
攻撃力。52
守備力。50
俊敏性。48
魔力。 49
『スキルポイントが溜まりました』そしてスキルポイントも30溜まった。俺はスキルウィンドウを開く。
習得するスキルは決まっていた。魔法攻撃だ。
俺は中級の炎魔法『火炎(フレイム)』を習得する。今の俺ならゴブリンを焼き払える。
「皆! 離れていてください!」
「な、なんでだ! アレクの兄ちゃん!」
「今から炎魔法でゴブリンの群れを攻撃します!」
「兄ちゃんは炎魔法なんて使えるのか! なんで今まで教えてくれなかったんだ?」
「いえ、ついさっき使えるようになったんですよ。これも精霊が経験値を運んできてくれたおかげです」
「へへっ。すげぇな。よくわからないけど精霊術ってのはなんでもありなんだな」
ルーネスは感心していた。
冒険者パーティー『紅蓮』の連中が飛びのいた事を確認し、俺は魔法スキル『火炎(フレイム)』を発動する。
MP消費は20。後一回しか撃てない計算だ。
「火炎(フレイム)!」
ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
灼熱の火炎がゴブリンの群れを襲った。ゴブリン達が火の海に飲まれる。
「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」
ゴブリン達は焼死していった。ゴブリン達は一匹一匹の耐久性が低いのだ。
「へっ。やったな兄ちゃん! すげえ威力じゃねぇか!」
「喜ぶのはまだです。まだ残党が」
「あ、ああ……そうだな」
大多数が消失したゴブリン達は旗色が悪いと判断すると踵を返した。
「ゴブリンの一匹に死なない程度に矢を突き刺してください」
俺は弓矢を持った冒険者に告げる。
「わかった。やってみる」
弓手は矢を放つ。そのうちの一本がゴブリンに刺さった。ちょうど腕あたりだ。あれくらいならすぐに死にはしないだろう。
「アレクの兄ちゃん、どういうつもりなんだ? ゴブリンを活かしておくなんて」
「それは勿論、巣までたどり着く為です。血の跡を辿れば巣までたどり着けるでしょう」
ゴブリンはキングを除けば。下っ端はさほど知能が高くない。その為、血の跡が辿られている事すら気づかずに、血痕を残して巣まで残る、そう考えた。
「へっ。それもそうだった。ゴブリン退治の基本だな。しかし兄ちゃんはよく頭が回るな。本当にEランクの冒険者か」
「ランクなんて関係ありませんよ。ゴブリンを倒すのにそんな事」
「それもそうだ……今重要なのはゴブリンを倒す事だけだな」
「ええ……」
「アレクさん」
カレンが声をかけてくる。
「ん?」
「行かれるのですね……ゴブリンの巣まで」
「そうなる……」
「この村のためにありがとうございます。ご武運を祈っております」
カレンは頭を下げた。
「ああ……祈ってくれ。俺と、それから精霊に」
「はい……祈っています。私にできるのはせいぜいそれくらいですから」
「最後の置き土産だ」
俺は精霊に命じた。ゴブリンに襲われ、怪我をした村人たちの怪我の治療を。
「ううっ……体が」
「き、傷がどんどん癒えていくぞ」
「お、俺達まで……」
冒険者連中の怪我も癒す。ゴブリンと直接闘っていた分、連中の損耗が激しかった。
「ありがとうよ、兄ちゃん」
ルーネスも礼を言ってきた。
「それじゃあ、カレン。行ってくるよ」
「いってらっしゃいませ。無事を祈っております」
こうして俺達はゴブリンの巣へと向かうのであった。
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