ゴブリンに襲われている村

「ここがカイネ村か……」


 馬車を降りた俺はカイネ村に歩いていく。確かにゴブリンの被害に苦しめられている村らしかった。


 村人たちは酷く落ち込んでいる様子だった。


「あんた……冒険者ギルドから来てくれた冒険者か?」


 村人が話しかけてきた。


「え、ええ。そうです。他に先行して村に来ている冒険者がいると聞きましたが、どこに行っています?」


「今は村長の村にいっているよ」


「どこにあります?」


「村の一番奥だ。案内しよう」


「え? いいんですか?」


「なに、冒険者は俺達にとって英雄だ。最後の希望の光なんだ。村をどうか救ってくれ」


 俺は村人に連れられて、村長の家まで行くのであった。村の中に入る。村には特に女性の数が少なかった。


「やっぱり気になるか?」


「え?」


「村に女連中がいない事だよ。特に若い」


「え、ええ……気にならないと言えば嘘になりますね」


「ゴブリンは雌を持たない種族なんだ。それで人間の雌を攫うんだ。それで巣に持ち帰る。何をやっているか、なんてわざわざ説明しなくてもわかる事だろ?」


「え、ええー……そうですね」


 雌を持たないゴブリンが人間の雌を持ち帰る。そこで行われている事。わざわざ説明しなければわからないはずもない。雌の生まれない種族は確かに存在する。オーク、それからゴブリンだ。


 奴らは弱い個体の雌を狙う。例外はある。勇者シドとパーティーを組んでいた女性たち。彼女たちは特別な強さを持っていた。だが多くの女性たちはそうではない。

 無論、オークやゴブリンの被害に苦しめられる女性たちは人間種だけではない。エルフでもそうだし、獣人だってそうだろう。


 だが、エルフは繁殖の力から個体数が少なく、獣人は身体能力が高い。その為、やはり被害を受ける数からすると人間の女性が多かった。


 オークやゴブリンからすれば恰好のターゲットなのである。個体数が多く、弱い場合が多い。狙わない理由がない。


「だからこの村には若い女が少ないのさ。おかげで村は御覧の有様、活気が失われちまっているんだ。若い女には子供産んでもらわなきゃならね。そうしなきゃ活気が失われちまうっていうのに。まあ、村には若い娘がいるんだけどよ。危ないもんで出来るだけ外に出ないように言われてるんだ」


「はは……そうなんですか」


 まだ村にも若い女性はいるのだろう。ただ外には出てこれないので目につかないのだ。その為、男連中か、よぼよぼの老人が出歩いているだけである。


「男連中も女守ろうとゴブリンと戦ったけど、大分死んじまって……若い男と若い女がいなくなれば、活気がなくなるのは無理もないだろう? 残っているのは俺みたいな中年や老人ばかりだ」


 一軒の家までたどり着く。他の家に比べれば比較的大きな家ではある。


「ここが村長の家だ。中には既に冒険者たちがいる。さあ、入ってくれ」


「案内、ありがとうございます」


「へへっ。お安い御用だ。村を頼んだぜ。兄ちゃん」


 こうして俺は村長の家に入っていくのであった。

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