冒険者ギルドで冒険者を打ちのめす

「いらっしゃいませー! 『ルナリア』の冒険者ギルドにようこそ!」


 冒険者ギルドに入ると受付嬢が快活な挨拶で俺を出迎えてきた。勇者シドのパーティーはSランクの冒険者パーティーではあった。


 だが、フリーの冒険者となる俺はまず冒険者登録自体をしなければならない。


「すみません……」


「はい! なんでしょうか? ご用件は?」


「俺、冒険者になりたいんです」


「冒険者として依頼を受けるのは初めてですか? でしたらまずは冒険者登録をしてください」


「……へへっ。見て見ろよ」


「ん? 何がだ?」


「あいつだよ。あいつ……あの勇者シドのパーティーにいたやつ」


「ああ……あの勇者シドのパーティーメンバーか」


「だけどあいつはただの何もしない腰巾着だぜ。こいつは面白れぇ」


「ん?」


 俺の目の前に数人の冒険者が現れる。


「兄ちゃん、勇者シドのパーティーに居たやつだろ?」


「……そうだが。それがどうした?」


「けけけっ! どうしたんだ? お仲間は?」


「あまりにも役立たずで追い出されちまったのか! きっけっけっけ!」


 冒険者たちは俺を嘲り始めた。何となくだが、勇者シドを彷彿させる。奴の品位はそこら辺のゴロツキと変わらないというわけか。


 俺はため息を吐く。こんな奴らの相手をしている時間が勿体ない。いちいち腹を立てるのもエネルギーの無駄遣いだ。


「それじゃ、受付嬢さん、冒険者登録の続きを……」


「は、はい!」


 ピキィ。そう、音がしそうなほどであった。


「坊主! 無視はよくねぇだろ! 無視は! 頭来ちまったぜ!」


 冒険者は怒って俺に殴りかかろうとしてきた。


 ――その時であった。俺を守護霊のように守っている、精霊達がざわめき始めた。


『ご主人様が危ない!』


『ご主人様を守れ!』


 精霊達は集まり、見えない拳のようなものを作った。


「くらえっ! この腰巾着めっ!」


 ガン!


「ぐわっ!」


 殴り掛かってきた冒険者は精霊達の作った拳で、逆にカウンターを食らい、吹き飛んだ。


「ど、どうしたんだ! 何があった!」


「わ、わかんねぇ。わかんねぇけどよ……あいつと関わるのはやめた方がよさそうだ


「そ、そうだな……なんかわからねぇけどあいつはやべぇ」


 冒険者たちはその場を去っていった。


「サンキュな」


『へへっ……どーいたしまして』


 精霊達は答える。


 その後俺は冒険者登録を済ませた。まずはEランクの冒険者として登録する事に。


「Eランクで受けられる冒険者クエストってどんなものがあるんですか?」


「そうですね……ゴブリン退治なんてどうでしょう? ある村の近くでゴブリンが大量発生していて大変危険な状態にあるらしいんです」


 ゴブリンか。確かに一匹あたりの戦闘能力は低い。低いは低いが数が多いのだ。数が揃っている場合、決して侮れる相手ではない。


 だが俺は考えた。俺のLVはまだ高くない。ゴブリンは一匹一匹から得られる経験値はそう多くはないが、多く倒せばそれだけ稼ぎにもなる。


 決して悪くはないかもしれない。今は倒しやすいゴブリンを倒してレベルを上げていくのも。それにゴブリンの被害に苦しめられている村を救うのも。


 世のため人の為になる。そんな苦しんでいる人々を救うのが俺が冒険者になった目的でもあるのだ。


「でしたら受付嬢さん、そのクエストで構いません」


「わかりました。クエストの受注登録をしておきます。その村には先行してたどり着いている冒険者パーティーがいますから、ソロの冒険者でもおすすめできるクエストなんです」


 俺は地図を渡され、大まかな場所を説明される。


 ゴブリンの被害に苦しめられている村。その名は『カイネ村』というらしい。


 俺は『ルナリア』よりも東に位置するその『カイネ村』を目指した。


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