スキル『精霊王の加護』を持った俺、追放されてしまう。精霊の加護がなくなり、レベルも魔法もスキルもなくなって路頭に迷ったから戻ってこい? 俺だけ精霊に慕われて最高に幸せなので君は野たれ死んでてくれ
【勇者SIDE】勇者シド、アレクが自分から出て行ったと嘘を言う
【勇者SIDE】勇者シド、アレクが自分から出て行ったと嘘を言う
勇者シドはパーティーのところへ戻った。
パーティーメンバーは女性三人で構成されていた。【剣聖】レイア【聖女】エミリア【魔術師】ルルカ。シドとアレクを除いて、皆美しい少女達ばかりで構成されていた。
美少女たちとはいえ、それぞれがちゃんとした役割を果たせる手練れのパーティーメンバーばかりである。
「どこいっていたのよ?」
ルルカは聞いた。
「随分遅かったですね」
エミリアは聞いた。
「それで、アレクはどこいったの?」
「ああ……あいつか。なんでもパーティーを出て行ったようだぜ」
「「「えっ!?」」」
場の空気が固まった。皆、一様に驚いているようだった。この反応はシドにとっては予想外の反応であった。もっと淡白な反応。
「ふーん……で?」「あんな奴、いなくなってよかったわ」「あんなお荷物いなくなったところで何の障害もないし」程度の反応が、シドの予想していたものだったのである。
だからシドはその反応に大変驚き、動揺していた。
「聞き間違いではないのか? 勇者シド」
剣聖レイアの声は震えていたようだ。
「な、何を聞き間違える事があるんだ?」
「ど、どうしてよ! どうしてアレクがパーティーを抜けていったのよ!」
聖女エミリアはそう主張をしてきた。
「どうしてと言われてもな……わかんねぇよ。あいつにもなんか事情があったんじゃねーの? 俺達の足を引っ張ってる事に罪悪感を感じていたとか」
「足を引っ張る? そんなわけないじゃない! アレクは私達のパーティーに必要な人材だったのに!」
「もう終わりだ……うちのパーティーは」
魔術師ルルカは嘆いた。
「ちょ、ちょっと待てよ! なんでどうなるんだよ! アレクがいなくなったくらいで! このパーティーには俺様がいるだろ! なっ! あんな奴いなくても!」
「あんた馬鹿じゃないの! このパーティーはアレクがいたから持っていたようなもんじゃないの!」
「どこにいるんだ? アレクは」
剣聖レイアはどこかへ向かおうとする。
「なっ!? ちょっと待てよ! どこに行ったかなんてわかんねぇよ! 闇雲に探しにいっても無駄だろ!」
「も、もう! シド! あんたなんでアレクが出ていく時に引き留めなかったのよ!」
エミリアに激しく非難をされ、シドはえらく動揺していた。出ていくのを引き留めるのは愚か、自ら追い出したのだという事は口が裂けても言えなかった。
「ひ、引き留めたさ! けどあいつは言う事聞かなくて、それでよ……」
シドは言い訳をする。事実を隠そうとした。
「そう……」
なんだか、パーティーがお通夜みたいな雰囲気になってしまった。そういえば、なぜか、女性陣は勇者であるシドに対してではなく、シドからすればLV1で何の役にも立っていない無能であるアレクに支持が集まっているような気がした。
シドはその事があまりに気に入らなかった為、アレクを追放したという面があった。
正直に言えば、アレクを追放すればシドにとって都合のいい環境になる。この美少女たちが俺に靡き、俺の物になる。
そうとすら考えていたのだ。だが、現実はそうはなっていない。
「ともかく、行こうぜ。次のクエストに」
「大丈夫かしら……アレクがいなくて」
「大丈夫だって言ってんだろ。さあ……」
不穏な空気を感じつつ、勇者シド率いるパーティーは次なるクエストへ出向くのであった。
(証明してやるからな! この勇者シド様が! あんなお荷物で何もしない無能野郎がいなくても、なんとかなるってな! なんてったって、これまでこのパーティーが上手くいっていたのは、あんな野郎のおかげじゃねぇ! 俺様がいるおかげだって事を証明してやるぜ!)
勇者シドはそう意気込んでいた。
――だが、勇者シドは知らなかった。この時既に、パーティーには悪霊がとり憑いているという事。
目にも見えない悪霊の存在に気づく事は特別なスキルもないシドには敵わない事であった。
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