精霊の力で村の危機を救う
「はぁ……なんでなんだよ。俺が何したっていうんだよ」
俺は嘆いていた。その時、俺にだけ聞こえる声で、精霊達が語り掛けてくれたのだ。
『ご主人様は何も悪くないよ。あの勇者がご主人様の力をわかっていないだけだよ』
そう、精霊達が優しく語り掛けてきてくれた。
「そうか……すまないな。お前達、励ましてくれるのか?」
『うん。私達は皆、ご主人様の味方だよ。だって私達はご主人様の事が大好きなんだから』
精霊は俺にそう言ってくる。確かに勇者は俺を裏切った。だが、精霊達は俺を決して裏切りはしない。
こいつ等さえいれば、俺はまたやり直せそうだ。
「よし! 1から頑張るぞ」
俺のLVは確かに今は1だ。だが、このユニークスキル『精霊王の加護』さえあればまた一からやり直せる。そんな気がするんだ。
俺は幸せだ。だってこんなに俺は精霊たちに慕われているんだから。
『ご主人様……あれを見て』
「ん? なんだ……あれは」
む、村だ。村が燃えている。近くを通りかかった時に、村が燃えていた。
「た、大変だ! 急ぐぞ!」
どういう理由があっての事かはわからない。だが、何かが起こっているようだ。このまま俺が逃げるわけにもいかなかった。
◇
「うわあああああああああああああああああああああああ!」
「に、逃げろ! 逃げろおおおおおおおおおおおおおおお!」
村にはドラゴンが襲っていた。火を吐くベーシックなドラゴン。レッドドラゴン(火竜)である。
こいつが放った炎のブレスが村の家に燃え移り、家事をもたらしたのだ。
村には冒険者たちがいた。だが、それほど手練れの冒険者ではないようだ。ドラゴン相手に手間取っている。
「ち、ちくしょう! ドラゴンの皮膚は鋼鉄より硬いんだ。なかなか剣が通らねぇ!」
「泣き言を言ってるんじゃねぇ!」
「に、逃げようぜ! 死んだら元も子もねぇよ!」
「む、村人たちを見捨てて逃げるっていうのか!」
「自分達が死ぬよりよっぽどいいだろ!」
冒険者たちが慌てふためいている。
慌てて駆けつけてみたらそこにいたのはドラゴンだった。糞……俺がドラゴン相手なんて何とかなるのか。俺は精霊使いではあるが、そのLVは1だ。
『ご主人様! ご主人様!』
「ん?」
『経験値を運んできたよ!』
「ありがとう……そうか」
今まで他の連中に経験値を運んでいたのが、自然と俺に集まってきたのだ。
LV1。HP10。MP0。
攻撃力。1
守備力。1
俊敏性。1
魔力。 1
しかし、精霊達が経験値を集めてきてくれたおかげで、俺のLVがあがった。
LV10。HP50。MP20。
攻撃力。32
守備力。30
俊敏性。28
魔力。 29
『スキルポイントが溜まりました』
スキルポイントか。見るとスキルポイントが30程溜まっていた。大体技スキルであれば一個くらいは覚えれるほどの数値だ。
どうしようか。しばらく、考える時間が必要だな。
「精霊達。頼む、そこで闘っている冒険者たちを癒してやってくれ」
『うん! わかったよ! ご主人様』
精霊達が俺にしか聞こえない声で答える。
「ん? なんだ?」
「お、俺達の傷が治っていく」
「た、戦える! これなら戦えるぞ!」
冒険者たちは再び戦える活力を取り戻したようであった。
「兄ちゃん……よくわかんないけど兄ちゃんが治してくれたのかよ」
「ええ……しばらく時間を稼いでくれたらありがたいです」
「よし! やるぜ! 野郎ども! 兄ちゃんを助けるんだ! きっと兄ちゃんならこの村を救ってくれるはずだぜ!」
「「おお!」」
冒険者たちは威勢よくドラゴンへ向かった。
『ご主人様、見て見て』
「ん?」
頼れる俺の精霊達が落ちていた剣を拾ってきてくれた。
『鉄の剣』を手に入れた。
俺は剣を手に取る。
「ありがとう……皆」
俺はスキルを選択する。『ドラゴン斬り』ドラゴンに対して特効効果のある剣技だ。
習得に必要なSP(スキルポイント)はちょうど30。俺は30SPを消費して、『ドラゴン斬り』を習得する。
『皆でご主人様のお手伝いをするの!』
精霊達が俺の体を覆う。
俺の体にバフ効果がかかった。俺はLVが10のままでありながら、LV30程度のステータスまで上書きされる。
そうか……皆に分け与えていた分を俺だけで使えるようになったから。全体バフが単体バフになった事で、一人当たりの掛け率があがったんだ。
俺は現在のステータスを確認する。
LV10。HP215。MP100。
攻撃力。131
守備力。123
俊敏性。110
魔力。 105
LV10とは思えない程の高いステータスだ。こ、これだったらドラゴンが相手でもいけるはずだ。
「皆さん! ありがとうございます! 離れてください」
「なっ!? いいのか、兄ちゃん。任せても」
「多分ですが……」
俺はドラゴンと向き合う。物凄い迫力だ。だけど、俺には精霊の加護がある。だから、きっとドラゴン相手でも遅れを取らないはずだ。
「はあああああああああああああああああああああああ!」
気合一閃。俺はドラゴンに斬りかかる。使用するのは技スキル『ドラゴン斬り』だ。
「ドラゴン斬り!」
俺はドラゴンを斬り裂いた。あまりにあっけない手ごたえに、俺は一瞬空振りをしたのかと思った。
だが、次の瞬間。
ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
ドラゴンが断末魔をあげて果てた。
「や、やった。勝てた」
『やった! ご主人様! やったよ! 流石ご主人様!』
精霊達が語り掛けてくる。
「そんなことない。お前達のおかげだよ。皆、悪いけど村の燃え移っている火を消してくれ」
『はーい!』
精霊達は燃え移っていた村の炎を消し始めた。こうして一騒動が終わったのである。
◇
「ありがとう! 兄ちゃん! あんたのおかげで村が救われたよ」
「……ありがとうございます。おかげで私達は救われました」
冒険者パーティー、それから村人たちがお礼を言ってくる。
「あの……少ないですがお礼をどうぞ」
村長と思しき老人が俺に小包を渡してくる。
「い、いや……いいですよ、別に。俺、そういうつもりでやったんじゃ」
「村の英雄を手持ちで返すわけにもいきません! さあ、受け取ってくだされ!」
俺は村長に小包を渡される。やっぱり受け取れないよなー。俺は受け取った。
「火事で家を直すのに入り用でしょう。これはお返しします」
俺はその資金を即座に寄付する。
「な、なんと慈悲深いお方だ! あ、ありがとうございます!」
涙ながらに村長は例を言ってくる。
「……兄ちゃん。もしかして、一人で活動しているのか? なんでこんなところに」
「よ、よかったら俺達のパーティーに入らないか?」
俺は冒険者パーティーに勧誘された。俺は勇者シドとの嫌な記憶を思い返す。利用されるだけ利用され、疎まれて追放された先ほどの光景を。
「いえ、遠慮します……。俺はまだどこのパーティーにも入りません」
「……そうか。残念だ」
俺は思う。俺は今、精霊達に慕われて幸せだ。だけど、世界にはこう、災いに苦しんでいる不幸な人たちも大勢いるはずだ。
俺はそんな不条理な世の中を変えていきたい。皆を幸せにしたい。そう思うようになった。
……そうか。冒険者か。なってみるのも悪くないな。
こうして俺は村から離れ、近くにある『ルナリア』という街を目指した。
そこになら冒険者ギルドもあるはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます