スキル『精霊王の加護』を持った俺、追放されてしまう。精霊の加護がなくなり、レベルも魔法もスキルもなくなって路頭に迷ったから戻ってこい? 俺だけ精霊に慕われて最高に幸せなので君は野たれ死んでてくれ

つくも

勇者に追放される

「てめぇはクビだ! アレク!」


 ある日の事であった。クエストが終わった帰り道。物陰に連れ込まれた俺は勇者シドからそう宣告された。


「な、なんだって! ど、どうしたんだよ。シドいきなり!?」


 俺の名はアレク。ユニークスキル『精霊王の加護』を持った精霊使いだ。精霊は確かに目には見えない微細な存在ではあるが、今まで勇者パーティーへの貢献は大きかったはずである。


 精霊は経験値を勝手に運んでおいてくれたり、体力の回復もさせてくれていた、それに人知れずに資金も集めてきた。そして武具を直しておいてくれたのである。


 ここまでしてくれる上に、精霊達は勇者パーティーを悪霊から守る、守護霊のような役割まで果たしていたのである。


「それはな、アレク! 俺達はもう完璧だからよ! 装備も魔法もスキルも揃った! それに腕の立つ剣聖様まで仲間に入った俺達のパーティーは完璧だ! そんな俺達に闘えもしない無能は必要ないんだよ! このLV1の雑魚野郎!」


 な、何もしない無能。確かに精霊達は目には見えない。俺は周りへの支援をするように注力していたため、俺のLVは1で闘う事ができなかったのだ。だけどそれは中途半端に俺が闘うより、周りに経験値を分配した方が効率的だと判断したから。


 それは勇者シドも理解しているのだと思っていた。だが、そう思っているのは俺だけだったようだ。


 ただ、そんな事を言われるなんて、俺は夢にも思っていなかった。


 これがこいつの本性なのか。こいつは装備もLVも仲間も、何もかも揃った今、俺を邪魔者扱いして追い出そうとしている。


「……へっ。わかってるぜ、アレク。実は嘘なんだろ?」


「う、嘘ってなんだよ」


「お前が精霊使いだって事だよ。本当は俺様のパーティーが順調に成功していったのも、全部俺様の実力だったんだよ。その俺様の恩恵にあずかろうと、お前は嘘をついてパーティーに入ってきたんだ。そうすれば英雄である俺様のおこぼれに与れるからな!」


「な、何を言っているんだよ! お、俺は元々お前とは同郷の幼馴染で、お前が熱心に俺をパーティーに誘ってきたんじゃないか」


「それはそうだったけどよ……実はお前なんていなくても上手くいってたんじゃねぇの? 俺様さえいればよ! クックック」


 勇者シドは俺をあざ笑った。


「ほ、本当にいいのかよ! シド! 俺のスキル『精霊王の加護』はただお前達の経験値を稼いでいただけじゃない! 人知れずお前達を悪霊から守ってきたんだ! 俺を追い出すと、お前達に悪霊が取りついてとんでもない事になるんだぞ!」


「ぐっはっはっはっは! そうまでしてまで俺様の勇者パーティーに残りたいのか! この無能野郎! いいから荷物まとめて出てけよ、アレク。これはもう、パーティー全体の意見なんだ。お前みたいな無能、必要ないってな!」


「俺みたいな無能必要ない……」


 み、皆、そんな風に俺を思っていたのか。俺を何もしない無能って。闘えもしない無能って。精霊達は人知れず皆の事を支えていたのに……そんなことって、あんまりだろ!


「最後にひとつだけいいか? シド」


「なんだ? アレク。言っとくけど退職金はねーぜ。何もしない無能に払う金はねぇんだよ。装備も何も、ひとつたりともくれてやるつもりはないぜ」


「そうじゃない。悪霊の影響を舐めない方がいい。悪霊払いできる僧侶系の仲間を入れるか、悪霊対策の装備やアクセサリーを多めに身に着けておいた方がいい」


「下らん忠告どうもありがとうよ。無能のアレク君。心配しなくてもこの俺様がいたから今までパーティーは順調だったんだ。決してお前みたいな何もしない無能がいたからじゃない。お前がいなくなっても俺達に何の問題ないんだよ。わかったらとっと消えろ! もうてめーの顔は二度と見たくねーんだ!」


「わかったよ……じゃあな」


 こうして俺は勇者パーティーを追放された。


 ◇


 しかし、この時、勇者シドは知らなかった。アレクの言っていた事は本当だったという事。

 そして悪霊の脅威が勇者シドの思っていた以上であった事。


 そして勇者シドはLVも装備もスキルも、頼れる仲間達も何もかもを失っていく。


 そして最後には、全てを失い路頭へ迷うのであった。












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