非実存小説より抜粋2

# 1ふぁぼ毎に実在しない小説の一部分を書き出す


黒い探偵

「ナンセンスなのだよ。人であるとかなんだとか、本質はそこではない。わかるかい?…わからないだろうね」

もったいつけるように、男は帽子を脱ぐ。下から現れたのは猫の耳だった。

「猫だって靴を履くご時世なのですよ、ムシュー」

チェックメイト、ニヤつく猫はそう言った



猟販店

所狭しと照明器具があり、そのどれもが輪っかの形をしている。店員は「とても貴重な材料」とか「今ではとても希少」だとか言う。値段も高そうだし帰ろうとすると、

後ろから、声。

「帰ってしまわれるんですね。永久の光も持たないで」

踏み出した足がかくりと、宙をふんだ。



完全犯罪のいろは

「どうされました?」保健室に来た顔を見て声をかけたが、その人は無言でベッドに腰掛けてしまう。今は昼食休憩、食欲の有無を聞くと小さく首を振る。仕方がないな、と冷蔵庫を開ける。「先生も、共犯ですからね」ゼリーを見た顔が少し笑った。つられた表情は隠せたろうか。





#いいねの数だけうちの子の実在しない小説の台詞を言う


「月夜の蛍。月の夜には月光で蛍が見えにくい、"ぼんやりとした"という意味です。

君と見た月を、君が見ている月を、焦がれて光が霞むのを、月が出ているからだと解釈される。

都合の良い事だとは思いませんか?

あの人以外には、月のせいにしてしまえるなんて」

おはようを探しに:亜摘 蛍



「だから、そいつに言った。

"地球人も宇宙人に他ならないが"と。

励ますつもりも、歩み寄るつもりも無かったが、そいつは納得しているようだった。

どこで産まれようと、生きようと、俺に重要なのは今の行動だけだからな。地球外で生まれていても、そうですか、というだけだ」

蒼茫に生きる:文月 昊



「正義の人、みたいな言われ方をよくするけれど、別にそういう訳じゃない。

実際のところ、俺は立ち止まった時が怖いだけですよ。

大切な人が、俺が立ち止まる事に安心した顔をするのがいっとう怖いんです。

傷付ける自覚をする代わりに、必死にぼろぼろになってる」

指切りをした日のこと:稲波 仁

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ついった駄文まとめ 真間 稚子 @MarmaChocori

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