君が話すことには

# いいねしたよその子への存在しない小説の台詞を抜粋する



「思うんですよ。なぜ、私達が選ばれ、この場にいるのか。そして、なぜ"探偵役"なんてものになっているか」

代理が指で写真を弾く。

「答えは明瞭。彼らが、ケモミミだったから。いや、敢えてこう言いましょう、私達がケモミミカチューシャだったから、と」

『DXケモミミ殺人事件』より



「どうも」白衣の男が微笑む。知らない人だ、息を詰めると悲しげに笑う。

「すみません、何も残さないのが、寂しくなって」

胸元の犬のマスコットを差し出す。

「これ21gなんです。私の、命の重さ。貴方に差し上げます」

翌朝、手元にはマスコットだけが残っていた。

『存在しない話』より





# リプきた自探索者にプロポーズさせる



夜の道を歩いている。「昔は夜道が怖かったんだ」なんて笑いながら。

「今怖くないのは貴方がいるからですね」

そう呟いた彼が、少し前に出てこちらに手を差し出す。緊張した様に、怯えた様に。

「手を、繋いでくれますか」

震える手を、応える様に握った。


それが彼の、【亜摘 蛍】のプロポーズ。



彼女が俺の貸した本の話をしている。

数日かけて選んだ本を彼女はすらすらと読み終え、山場の告白への考察を口にする。不満そうな彼女に、意を決して言う。

「俺ならどんな小説の男より、君の満足する言葉を使いますよ」

真剣に彼女だけ見て言った。


それが彼の、【山末 虎太郎】のプロポーズ。



己の手は、汚れていると思った、人を傷つけるのだと思った。

藁すら掴まなかった手で、掴むものなどないと思った。

見ていた己の手に、白い手が重なる。

その人の手を、壊れない様抱き寄せる。

「今更、離せやしませんぜ?」

触れた綺麗なものに願う様言った。


それが彼の、【篠目 雨】のプロポーズ。



腕時計を見て、出口の手前で彼女を呼ぶ。「忘れ物です」そう言ってキスを落とした

物陰から短い悲鳴。わざとらしく「おや」と答え、唇に指をあてた

足を踏まれるが、頬が赤くて大層可愛い。自身の背丈で隠して言う

「それ。僕以外に、見せたら駄目ですよ」


それが彼の、【田野倉 幸治】のプロポーズ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る