貴方の為の世界です

# いいねしたフォロワーさんが好きそうな世界観を独断で作ってみる




白いテロル

"君がそれを探すなら、それは何処かに在るんだ"

バベルの塔、ひび割れたあの残骸を昔はそう呼んだらしい。神様が言葉を奪った発端だと、文字の伝え方を失った人類は忘れるばかりだろうけれど。

元言語学者の元に小さな神様がやって来て、彼女は"言う"「ねぇ!この本読んで!」




太陽の沈む丘

"いつか、丘の向こうを見るまで"

貴方は旅をしている。動機は軽く、丘の向こうの景色に興味がわいたから。少女に柑橘を貰ったり、青年の恋路を応援したり、老人の最後の願いを叶えたり、充実した旅といえよう。

そう、目の前の丘に一向に辿り着かない事を除いて。




人間になった日

"世界とは、白い部屋と画面の中の貴方。それが全て"

彼女の状況を現す言葉は沢山ある。隔離や保護。監禁とも。彼女は動かない。画面に映る僕の言葉に答えること、それしか知らないから。

彼女に僕は言う「誕生日だね。今年は自由を用意したんだ」喜んでくれるかなぁ。




空海予報士第一級

"あー、テステス。本日は鯉の滝登りの日!航空各社お気を付けて!"

バイクの喧しい音をBGMにマイクのスイッチを入れると、反響し不快な音が響き渡った。そう言い切ってゴーグルをずらし、空を見上げる。

何万もの鯉のぼりが群れをなし宙へ向かう。今日も雨は降らない




野獣の四箇条

"一つ、貴方は偽り続ける

一つ、貴方は苦しみ続ける

一つ、貴方は蹂躙を受け入れ続ける"

それがノケモノの掟である。課せられた鎖であり楔。生きる限り纏わりつく、黒い靄。それにあの人は笑ってこう加えた。

一つ、君は全てに抗い続ける

それは、どれより残酷な掟だった。




独占翼

"あなたに起こる、奇跡の全てが欲しい"

お母さんの作ったお人形、お父さんの飲んだビールの王冠、お兄ちゃんの折り紙のオレンジ。全部が宝物。

だけど、足りない。あなたが一番欲しい。ボタンも手紙だって欲しいけど、あなたの笑顔が欲しい。

大きな翼が彼女の表情を隠した。




レイマンの歌謡喜劇

"君の為なら、夜空の満月だって咥えて来るよ"

僕らを見た観衆が「身分差の恋」だと囃す。店主が箒で僕を追う。

それもそうだ。君はペットショップで売るのが勿体ない程の血統書付きの令嬢で、僕は段ボールに入っていた門外漢。

そして、首輪付きの犬なのだから。




大魔女エブリスタの遺宝

"ワタシのどんな呪い薬より、アンタの茶が好きだよ"

彼の大魔女は3人の弟子に薬草を遺した。上の弟子には、竜の触媒となる大樹の葉を、中の弟子には魔導書の必須項目とも言える万能の花弁を。

私には魔術的価値の一切無い、咲いて枯れるだけの花の種を。




配給物資彼女

"嚥下されるその瞬間、私は喜びを感じます"

それは食品だ。栄養素、味に問題は無く、いえば一日の間に食べなければ腐る事、そして、少女の形をしているのが私は好きでは無かった。

再生能力の長けたそれは、翌日には元の姿で現れる。今日も変わらず罪を侵せというように。




龍珊瑚の秘薬

"その秘薬のみ…"

4割の人間が角を有し、煎じて薬品とする文化があった。ただ、医学の進歩で角を求める人は少ない。

「息子の熱が下がらないのです」訴える母親に小柄な少女が小包を差出す。中には万能薬である龍の角。理解及ばず固まる彼女を少女はニヤリと笑う。




茶房ムフロン

"喫茶ですか、軽食ですか?それとも推理をお望みで?"

世界は退屈だ。青信号は黄色くなって赤信号に変わる。野球部の連中はお辞儀をしてグラウンドに入る、サッカー部はあんましない。

あの店で"注文"したのは、きっとそんな世界に残された期待のようなものだった。




エーデルワイスを聞かせて

"食べる事、その幸せの意味を"

悲しければチョコレート、楽しければゼリービーンズ、苦しければガムを噛む。全ての感情は満腹感に飲み込まれ、吐き気すらする飽食の幸福が全ての欲を捩じ伏せる。

故に誰も知らず知ってはならなかった、その自由の花の歌など。

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