第381話 2015年8月 26

静かに砂浜に沁み込む波の音が支配する永遠の静けさのなか、時折彼女の甘い吐息が漏れていた。

やがてリリィさんは、俺の肩に手を当てて、唇を離し、吸い込まれそうな澄んだ瞳で俺を見つめ、掌を俺の頬に当てて、ゆっくり言葉を継いだ。


「けんたろー……私……今日、お泊りの許可貰てきちゃったの……私……今夜、帰る場所無いの……だから……いいでしょう? けんたろーのお家に泊っても……


悔しいの……


15周年とか……

けんたろーがその人をずっと思ってるって思ったら、負けたくないって……


だから……

私……


あのお姉さんから、けんたろーを奪いたいの……」


眉間にしわを寄せて、きゅっと唇をかみ、俺に真っ直ぐに視線を向けたリリィさんは、そう言うと俺に抱きついて来た。


気が付いたのか……

リリィさん……

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