第346話 2015年5月 27

そんな……

けんたろー……


私のために仕事まで辞めちゃったの?……


……ごめんなさい。

ずっと連絡できなくて……


連絡先が……

お母さんの携帯が新潟空港で無くなって……

他に誰の連絡先も私は分からなくて……


今にして思えば、学校とかに手紙を出せばよかったのに、五年前の私にはそんな知恵が無くて、それからしばらくたってしまって、今さら出しても、けんたろうーに新しい生活が出来てたら……


私じゃない誰かと幸せになっていたらって、子供の話なんて、真に受けるはずないって思いだして……ただ、ただ現実に向き合うのが怖くて、連絡できなかったの……


でも……待ってくれていたんだ……


でも……もう、諦めちゃったんだ……


………………


………………


……後悔した。


なんで、もっと早く、けんたろーに合わなかったんだろう……

涙があふれて止まらなくて……

時折、自動車が通る地元の商店街の道路の小さな歩道の上で、私とけんたろーのお姉さんと二人でずっと泣いていた。

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