第246話 リリィさん……

「やっと笑った……」


まっすぐに俺を見るリリィさんがテーブルの反対側、今まで嬉しそうにケーキを眺めてハアハアしていたリリィさんが表情を変え、時々見せる大人な表情をみせながら小さく。


「けんたろー、あんまり思いつめないで、けんたろーのいい所だけど悪いところでもあるよ。大好きな先生が死んじゃったんだから、仕方がないとは思うけど、そんなの校長先生は望んでないよ。絶対に。


だって、けんたろーに幸せになって欲しくて、けんたろーを小学生にしたんだから、私に合わせたんだから、ね? いい? わかったら、暗い顔禁止よ!」


まっすぐに俺を見る彼女の瞳に吸い込まれそうになっていた。

あまりにも美しい、薄茶色の透明感を纏った程よく潤んだ瞳は、部屋の照明の美しい色彩を吸収し、煌びやかに輝きを増幅して、俺の心に入り込む。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る