第213話 デート2


「ケンちゃんはお寿司嫌いだから、今日はお肉ね。私は、お酒と適当に頼むから、気にしないで」


高そうなホテルの上階にある、手前に隅田川を望み、都心を見渡せる絶景のレストランで、レイアさんは、ここを予約してくれていたらしい。入口で予約の名を告げると、ウチの黒服とは大分風格の違う白髪交じりの黒服の男性が、


「お待ちしておりました。如月レイア様」


軽く頭を下げると、俺達を誘う。


店は30程のテーブルが有って、半分までにはいかないけど……綺麗に着飾った人たちで賑わっていた、


「レイアさん……俺、こんな格好……」


先を歩くレイアさんに呟いた。

子供心にも、とんでもない不釣り合いな格好だと思った。

ジーパンに白T。

幸いなことに、ふざけた文言メーッセージは入っていないが……


「大丈夫ですよ。当レストランは、お客様を服装で区別する事などございません。


ここで、こうして最高の時間を過ごしていただく事が我々の使命です。


以前、ずっとずっと前の時代には服装がその人を示す分かりやすい目印だったんですね。それから、時は流れて、今となっては何の意味も持ちません。むしろ、そこでそれを変な色眼鏡で見てしまってサービスの区別をつけては我々の品位が疑われるのが現在です。


ですから、お客様の服装は、誰に恥じるものでもございませんよ。ご安心ください」


俺の呟きを捉えた黒服紳士が、俺の隣を一緒に歩いて、微笑みながら、いい調子で歩き、それだけ言うと、先行し、ホールの奥の眺めの良い窓際テーブルの椅子をレイアさんの為に引いている。


「どうぞ、楽しいひと時を……」


俺の方に廻った黒服紳士は俺の椅子を引いて、着席を促し、一礼して奥へと消えた。

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