第7話
「
「なんて書きます?」
「適当に書いといてくれ、東京からの子な、俺は寮の部屋の掃除手配するから」
いわゆる地方への出稼ぎ組だ。出稼ぎの子は店の用意するアパートに入るか、自分で用意するかだ。中には店の部屋で寝起きする猛者もいるがごく少数だ。要は金の問題だ。払う金額で泊まる場所が変わるのだ。
どうするかな、雅さんに確認願うか……
今度のキャスト達の技術的なところの事だ。
雅さんはこの業界十数年のベテランさんで、東京の有名店に在籍していたが、一身上の都合でこっちに越してきて数年、ウチの店に在籍して“安定の雅、迷ったら雅”と俺はお勧めしているし、常連さんだけで食べていける数少ない姐さんだ。
そして、ここだけの話、俺の初めては雅姐さんに奪われた。いや、差し上げた。雅さんがこっちに来る前、東京にいた頃、俺は雅さんの客として入った。そして、正直に俺の状態を、初めてだと話したら、“それじゃぁ、ここのスタイルでお祝いするわ”と持てる技術を惜しみなく披露くださって、俺を際限なく天国へと導いてくださった。
そういう関係だ。
雅さんには、お子さんがいる。確か、中学生だったか、彼女のブログにも時々登場する。妹として、話題だけだが。雅さんは、この世界のフォーマットの一つ。男がらみで借金を負い、この仕事に着いた。
男に売られたのだ。
今どき、と、思うかもしれないが、それは、この世界では決して珍しい事では無く、男の嘘に
中には具体的な目標があって割り切って金だけ稼いでその金額に達すれば、ぱっとやめてしまう様な子もいるが、そういう子は二度と戻ってこない。俺は、彼女たちが店をやめてこの業界をやめるというときは決して戻ってこないように祈って送り出すが、俺調べでは、半数以上が鮭のように戻ってくる。
「店長、学校どう?」
事務所の机で本日の宿題をしている俺に雅さんが声を掛けてきた。
「楽しいよ。でもさ、意外に難しい問題とかあって、当てられると、背中に冷や汗かくときあるんだよ。先生もプロだよね。俺が分かんねぇなって顔してる時だけやってみてって可愛い顔で俺を名指ししてくるんだよ。それで、ご学友たちも、俺を期待の目で見るんだよ。その期待に応えるべく頑張る、みたいな毎日、いや~楽しいね」
「店長、なんか良かったね。私も店長がそんな風に笑うなんて思わなかった。私も嬉しいよ」
雅さんが俺に頷きながら、笑顔で俺の頭をなでなでしている。雅さんはこんな感じ、人の気持ちに共感しすぎなのだ。相手の気持ちをわかろうとし過ぎて、それで、共感しすぎて、それを悪用しようという男につかまる。そして、それを繰り返す。残るのは男の借金と、怖い取り立てのお兄さんとのお付き合いのみ。
「雅さん? 変な男につかまってないよね?」
「な、なに? 急に。 そんな事無いよ。もう、男はこりごり、私は娘に全てを捧げてるの。心配ご無用!」
雅さんはそう言って足早に事務所から消えていった。
………………大丈夫だろうな?
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