第20話 解説 タイムマシンには乗らないで問題

 今回は公募を目指されてる方向けでーす!

 よくあるやつですこれ。


♢♢♢

・枝豆くんは、桜の花びらがひらひら舞い落ちる通学路をひとり歩いていた。遅刻が決定しているので周りに同じような学生は一人もいない。

 午前9時半の気持ちいい空気を吸い込みながら、枝豆くんは思い出していた。

 そう、あれは2年前のこと。

♢♢♢


 ここから2年前へジャーンプ!!

 そう、回想シーンですね。今回は回想シーンについてです。

 この回想シーンってやつ。公募作品では極力やらないほうがいいですよ、って言いたいのです。わたしは気づいたら必ず指摘します。具体的にお話しますね!


 回想シーンを使っていいのは、以下のパターンです。


・そもそも公募に出さない

・公募作品でも、回想シーンがなんらかのトリックとして機能している

・回想シーンを用いても読者を混乱させない絶対的な自信がある


 これらの場合は回想シーン、使って大丈夫です!

 でも、これらにひとつも当てはまらない場合は、やらないほうがいいですよ。

 なんでかっちゅうと、だいたい無駄だからですね。

 公募作品って、中身がぎゅう〜って詰まったものを書きたいですよね。回想シーンにするくらいなら、時系列順に書きましょう。時系列順に書いたときに、「これこの場所に要るかな?」って疑問に思った場合は、だいたい要らないです。


 でもでもほら、プロだってやってんじゃん回想シーン!! って思われる方もいらっしゃるでしょう。

 ちょっと厳しい言い方をしちゃいますね。


 彼らはプロなのです。読ませる技術があって、お金を払ってくれるファンが確実に存在するのです。「これはおもろいに決まっとる」って思われながら、手に取られるのです。


 公募を目指す人っていうのは、大多数が「プロになりたい人」ですよね。中には違う人もいるかもしれませんが、大多数は「プロになりたい人」です。最初に公募作品を読んでくれるのは、お金を払ってくれるファンではありません。下読みさん、もしくは選考委員です。彼らは「おもろいに決まっとる」なんて思いません。「どうせ知れとる」。そこからのスタートなんです。この差は大きいですよ。

 下読みさんに「こいつあかん」と思われたら一次落ち、運良く一次を通っても、選考委員に「こいつあかん」と思われたらそこまでです。お金を払ってくれるファンには読んでもらえません。

 ひたすら安全策を取ってしっかり対策した作品と、自分の実力を信じてチャレンジした作品は、どちらが選ばれやすいでしょうか。

 好きなことするのは、選ばれたあとにしましょうね!

 

 そもそもなんでやらないほうがいいの〜? ってことですが、それはですね、小説だからですよ。

 この回想シーンを使いがちな人は、マンガ、アニメ、ドラマなんかを好んで沢山見られてる方が多いはずです。

 マンガ、アニメ、ドラマには、絵もしくは役者さんがいますね。見てわかるんです、「あ〜これ枝豆くんの過去だわ〜」って。


 小説って、文字しかないんですよ。

 加えて、小説を読む10代から70代、80代の読者の人たち。よく考えてください、20代以降はみんな大人です。だいたいの20代から60代くらいまでの人たちは、なにかしらのお仕事をしています。疲れているのです。じっくり一文字ずつ読んでくれる人と、さらっと流し読みをする人、どちらが多いと思いますか。

 書き手の皆さんは丁寧に読まれる方が多いでしょう。でもそれは、自分が書く人だからです。書かない人は、そうではない。

 回想シーンは、大多数の疲れた大人を迷子にして、混乱の渦に「ああ〜れぇ〜」してしまうのです。恐ろしいですね。

 

 読むことに疲れさせてしまうのは、公募作品としてよろしくありません。

 だから公募作品では、基本的に回想シーンは用いないほうがいいですぜって言いたいのです。


 なんならホラー作品とかは、回想で展開したらほぼ絶対にだめですよ〜!!

 だって回想してるってことは、「結果的に無事だ」ってことの証明になっちまうではないですか〜!! 無事だって最初から分かってるものが怖いわけないですよね。笑


 そういう意味でも、回想シーンにはいつどこに落とし穴があるか分かりません。墓穴を掘らないためにも、枝豆くんをタイムマシンに乗せるのはやめときましょ。タイムマシンなんて、日本にはのび太くんちの引き出しくらいにしかないんですよ。

 神様と同じくらいアテにはなりません。ね!


 あ、ちなみに今回は例文のお直しはありません!

 回想シーンの場合は、問答無用で「そのへん全面書き直し」ですからお気をつけくださいませ!! 笑

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