第17話 人称と視点編 やっぱ例文が必要でしたよね

 わたしの説明がふんわ〜りしていたばっかりに、耳から煙出てきちゃった方がおられたみたいなので、頑張って背後霊タイプと浮遊霊タイプの例文を用意してみました! 笑

 生理現象は持ち越しです!


 全体の雰囲気の違いを見てもらいたいので、いつもよりもちょっと例文が長いです。そして、多分このやり方が一番分かるかと思うので、同じ場面で目の場所を変えて書いてみますね。


 まずは『浮遊霊タイプ』です。


✾✾✾

 化粧台の前に座って乳液をつけていると、ドアブザーが鳴った。

 おからちゃんがバスローブ姿のままドアの前まで移動し、チェーンをかけたままほんの隙間を開けると、そこにはワインを片手に持った枝豆くんが立っていた。

 おからちゃんは一度閉めてからドアチェーンを外し、もう一度今度は大きくドアを開ける。

「こんばんは。手土産は、これで良かったかな」

 枝豆くんはにこやかな表情で部屋に入ると、おからちゃんの代わりにしっかりとドアチェーンを施錠した。

「本当に来たんですね」

「来ると思ってなかった?」

「ええまったく」

 おからちゃんは部屋の奥まで戻ると、ベッドに置いたままにしていたドレスを拾い上げ、ハンガーにかけた。

 ワイシャツにスラックス姿の枝豆くんは、窓際に設えられた丸いテーブルへ持参したワインを置き、備え付けのグラスをふたつ、勝手に用意した。

「俺に部屋番号を教えたのはきみだ。ああ、ここの部屋は夜景が綺麗だな」

「違いますよ、教えたのはプリンさんです」

「同じだろ。彼女はきみの部屋番号を聞かれて怒っていたな」

「彼女に悪いことをしてしまったわ」

「ちゃんとフォローしておいたから、恐らく大丈夫だよ。それにしても、随分と扇情的な姿をしているな。俺を待っていた?」

 冗談混じりに話しながら淀みなくコルクを開け、グラスに少しずつ注いでいく。

 おからちゃんはそれを受け取ると、「ありがとう」とまたさっきと同じようにグラスを鳴らした。

「さっき言ったじゃないですか。本当に来るとは思ってなかった。シャワーから出たばかりで、まだ髪も乾かしてないのに」

 責めるような困ったような声で話すおからちゃんに、枝豆くんは控えめに笑みをこぼす。

「それは急いで来た甲斐があったな。確かに濡れてる。しかし風呂上がりが別人じゃなくて良かった。……さっきの続きをしても?」

「性急なんですね」

「おから」

 枝豆くんはおからちゃんの名前を優しく呼び捨てにすると、渡したばかりのワイングラスをその手から奪い、テーブルに戻した。

 そうして、おからちゃんの濡れた髪に指を這わせ、手櫛を通すようにして毛先を弄ぶ。その手は毛先から段々と登っていき、耳をくすぐり、頭を撫でる。両手で包み込むように髪を撫でていたかと思うと、次にはその両手を頬に添えた。

 近づいてくる顔に目を伏せると、先程と同じようにくちびるが重ねられる。少し舐めてから枝豆くんは一度くちびるを離した。

「にがい」

「ああ、さっき乳液をつけたから」

「綺麗な肌は大体みんなにがいんだよなぁ」

 枝豆くんは楽しそうにそう愚痴をこぼすと、そのにがいくちびるを堪能し始めた。

✾✾✾


 さて、これを、目の場所をずらしますよ。

 『背後霊タイプ』です。


✾✾✾

 バスローブを羽織って、化粧台の前でぐったりしながら乳液をつけていると、ドアブザーが鳴る。

 まさかと思った。バスローブ姿のままドアの前まで移動し、チェーンをかけた状態でほんの隙間を開ける。そこにはワインを片手に持った枝豆くんが立っていた。

 おからちゃんはやっぱり、と思いつつ、ちょっと待ってと一言告げてから、慌ててドアチェーンを外す。

「こんばんは。手土産は、これで良かったかな」

 枝豆くんがにこやかな表情を浮かべながら部屋に入ってきたので、おからちゃんは呆れた。

「本当に来たんですね」

「来ると思ってなかった?」

「ええまったく」

 話しながら、そういえばベッドにドレスを投げ置いたままだったと気づいて、おからちゃんはさり気なく部屋の奥まで戻る。隠すようにしてドレスを拾い上げ、素早くハンガーにかけた。

 おからちゃんがそのハンガーを仕舞って戻ってくると、枝豆くんが窓際へ備え付けられた丸テーブルに、グラスを用意していた。ワイシャツの袖を腕まで捲くり上げている。

「俺に部屋番号を教えたのはきみだ。ああ、ここの部屋は夜景が綺麗だな」

「違いますよ、教えたのはプリンさんです」

「同じだろ。彼女はきみの部屋番号を聞かれて怒っていたな」

「彼女に悪いことをしてしまったわ」

「ちゃんとフォローしておいたから、恐らく大丈夫だよ。それにしても、随分と扇情的な姿をしているな。俺を待っていた?」

 枝豆くんは冗談混じりに話しながらコルクを開け、グラスに少しずつ注いでいく。

 おからちゃんは要らないと思ったが、流石に素直に断るのも気が引けて、それを受け取った。

「さっき言ったじゃないですか。本当に来るとは思ってなかった。シャワーから出たばかりで、まだ髪も乾かしてないのに」

 ついつい隠しきれない不満が溢れるおからちゃんに、枝豆くんは控えめに笑ってみせる。

「それは急いで来た甲斐があったな。確かに濡れてる。しかし風呂上がりが別人じゃなくて良かった。……さっきの続きをしても?」

「性急なんですね」

「おから」

 呼び捨てにされて、おからちゃんははっと小さく息を詰めた。渡されたばかりのワイングラスは、口をつけることなくテーブルに戻されていく。

 そうして枝豆くんが楽しげに、自分の濡れた髪に指を這わせてくるのを、おからちゃんは素直に受け入れた。その手は毛先から段々と登ってきて、耳をくすぐり、頭を撫でる。包み込むようにいくらか触っていたと思うと、次には頬を撫でられた。

 近づいてくる顔に、おからちゃんは目を伏せる。すると先程と同じように、しっとりとくちびるが重なってくる。そして、離れていく。

「にがい」

 にがい? 言われた言葉におからちゃんは一瞬呆けて、それでもすぐに思い至った。

「ああ、さっき乳液をつけたから」

 おからちゃんがそう言うと、枝豆くんはなるほどという顔をして、それから苦笑した。

「綺麗な肌は大体みんなにがいんだよなぁ」

 楽しそうにそう愚痴をこぼすと、枝豆くんはそれでもそのにがいくちびるを堪能し始める。

✾✾✾


 お疲れさまでしたー! 長かったですよね! わたしも疲れました! 笑


 これは、元々『浮遊霊タイプ』で書いていたものを無理やり『背後霊タイプ』にしたので、ちょっと違和感があるかと思います。

 セリフは変えてません。地の文をおからちゃんの目線に合わせました。

 違いが伝わるでしょうか? 伝わらなかったら本当にごめんなさい。笑


 『背後霊タイプ』のほうが、少し柔らかい印象を受けませんか? 時間の進み方が少しだけゆっくりになった気もします。

 あと、『背後霊タイプ』は100文字くらい増えました。


 『浮遊霊タイプ』だと、枝豆くんの様子もよく見えたかと思います。

 『浮遊霊タイプ』はあっさりした印象じゃないですかね。すらすらと展開が進みそうです。


 結構きっぱりと分けて書いてみました。

 読みやすい、読みにくいは、人によって変わるかと思いますし、どっちのタイプにしても、おからちゃんからどの程度離れたりくっついたりしてるかによって割合が変わってくるとも思います。

 どっちが良い悪いではないですけど、こんな感じになるよ〜っていうのが、ふんわ〜り伝わるといいなって思ってます。


 最後に、ちゃんと許可もらってきたので、お手本のような作品を載せておきますね! わたしのより絶対こっちを読まれたほうが分かりやすいです!


背後霊タイプ寄りの作品

 『葉桜の君に』野々ちえさん

https://kakuyomu.jp/works/1177354054895321398


浮遊霊タイプ寄りの作品

 『青海剣客伝』藤光さん

https://kakuyomu.jp/works/1177354055093681738


 読みやすいと面白いのダブルコンボでわたしはとても羨ましいです。笑

 是非ぜひ読み比べてみて、雰囲気とか、展開の仕方とか、物語のスピード感とか、そういうところを「ほほーう」ってなってもらえたらなって思います!


 さて次こそ生理現象を。笑

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