第8話 解説 句読点って意外と大切なんですぜ問題

 句読点に、固定された正しい位置はないかと思います。

 ようは読みやすければそれでいいのです。

 じゃあこれはどうでしょう。いくつか挙げてみますね。


❁❁❁


 枝豆くんは、しまった、と思って、慌ててその机の、上の蜜柑を取った。


 おからちゃんが酷いことをするので、ぼくは腹が立って、でもそれを我慢しようと思ったから、気持ちを落ちつけるために、取り敢えずブランコに乗ったら、勢いをつけすぎて、尻が滑って地面に落ちた。


 この間の、やり残しの宿題を先生に叱られて、渋々やっていたとき、枝豆くんが邪魔をしに来たから、ぼくは野球をしにいくことに決めた。


❁❁❁


 よく見かけるやつを、取り敢えず3こ出してみました。どうでしょう。

 ご自分の作品のなかに、似たようなものはないですか?

 句読点はあって当たり前のものですけど、意外と使い方が難しいんですよね。


 ここでまず、この3つにそもそも問題があるのかい? というところからいきましょうね。

 これらは、まあ前回の『ぶちぶち千切れてるぜ問題』も同じなんですけども、まず「全体のなかでどうなってるか」っていうのを見ないといけません。

 1から10まで、全部がこんな調子であれば、それでいいんですよ。それは「意図してやってること」だから、その作品の味だとわたしは受けとめます。

 でもそうではなくて、「そんなつもりがないのに」、こんな感じになってる。これがマズイんですよね。なぜマズイのでしょう。ただ読みにくいだけだからです。そこをまず判別しなくちゃいけません。

 そんじゃあまあ、これらがマズイぞということを前提にして、いっこずつ直していきましょうね。




 枝豆くんは、しまった、と思って、慌ててその机の、上の蜜柑を取った。


 さーてこちらの第一印象は!?

 わたしは、「読点多いな! 笑」です。

 どう見ても多いですよね。ちょっと削りませんか、読点。笑

 さてここで問題です。どこの読点をどんだけ削ればいいでしょーうか!!


 はい時間切れ!!

 答えはですね、「前後になにが書いてあるのかによる」です。

 恐らくこれがぱっと浮かんだ人は少ないのではないでしょうか。すぐに浮かんだ人は、句読点マスターですね。もうこれ以上を読む必要はないかと思います。笑

 

 冒頭で言いましたけど、句読点に正しい位置はないです。読みやすかったらそれでいいんですよ。

 そして読点は、単語を強調したいときに使えたりもします。

 いくつか例を出してみますね。


 「しまった」を強調したいやつ

・枝豆くんはしまった、と思って、慌ててその机の上の蜜柑を取った。

・枝豆くんはしまった、と思って慌てて、その机の上の蜜柑を取った。


「慌てて」を強調したいやつ

・枝豆くんはしまったと思って慌てて、その机の上の蜜柑を取った。


「蜜柑」を強調したいやつ

・枝豆くんは、しまったと思って、慌ててその机の上の、蜜柑を取った。

・枝豆くんはしまったと思って慌ててその机の上の、蜜柑を取った。

・枝豆くんはしまったと思って、慌ててその机の上の、蜜柑を取った。


「取った」を強調したいやつ

・枝豆くんは、しまったと思って、慌ててその机の上の蜜柑を、取った。

・枝豆くんはしまったと思って、慌ててその机の上の蜜柑を、取った。


 いっぱいありますね〜。打つのが面倒です。笑

 強調したい単語の前後に読点が打ってあるのが分かるでしょうか。

 絶対に必要なのがそこで、あとは周りの文章と合わせて、ここだけあればいっかな、と思えるところに打てばいいかと思います。

 多すぎる読点は、読んだときに息切れしたみたいになっちゃうので、目立ってほしい単語の前後に打つのを意識してみてくださいね!

 はい次!!




 おからちゃんが酷いことをするので、ぼくは腹が立って、でもそれを我慢しようと思ったから、気持ちを落ちつけるために、取り敢えずブランコに乗ったら、勢いをつけすぎて、尻が滑って地面に落ちた。


 これの第一印象は恐らくこうでしょう。「なっが!! 笑」

 ここは句点の出番です! さて句点はどこにつけたらいいでしょう!

 答えはこちら!

「場合による」。

 またかよ。そう、またなんです。句読点なんてこんなんばっかですよ。

 そもそもなんでこんなに長いと良くないの? これも答えは同じ。ただひたすらに読みにくいから。

 もう面倒なので、取り敢えずこれでどうや! みたいなパターンをいっこだけ書いてみますね。これが唯一の正解ではないですよ、あくまで一例ですからね。


 おからちゃんが酷いことをするので、ぼくは腹が立った。

 でもそれを我慢しようと思ったから、気持ちを落ちつけたくて、ブランコに乗った。

 そしたら勢いをつけすぎた。

 ぼくは尻が滑って、地面に落ちてしまった。


 分かりやすくするために改行しました。

 コツは、一文のなかの情報量を「多くて3つ」までにすることです。


1文め 「おからちゃんが酷いことをする」「ぼくは腹が立つ」

2文め 「我慢しようと思った」「気持ちを落ちつけたい」「ブランコに乗った」

3文め 「勢いをつけすぎた」

4文め「尻が滑った」「地面に落ちた」


 こんな感じになってます。句点、いい子なので使ってあげましょうね。笑

 はい次。





 ③

 この間の、やり残しの宿題を先生に叱られて、渋々やっていたとき、枝豆くんが邪魔をしに来たから、ぼくは野球をしにいくことに決めた。


 これに関してはですねぇ、絶対にあっちゃいけないところに打ってある読点が、いっこあるんですよ。どれだか分かりますか?

 もう疲れてきたから答えを言っちゃうよ。ここですわ。


 この間の、


 これがマズイやつです。

 なんでマズイんでしょう。そもそもこれ、文章がなにを言いたいのか分かりますか?

 実はこれ、「この間のはなし」じゃないんですよ!

 これを読んだ半数くらいの人が、恐らく「この間のはなしだと思った」、もしくは、「ん? ん? え? んんん?」ってなったかと思います。

 その原因が「この間の、」っていう読点です。

 ①のところで言いましたね、読点は単語を強調させることができるって。

 「この間の、やり残し」じゃないんですよ、「この間のやり残し」なんです。

 こーれはマズイですね。誤読してください! 叙述トリックです! っていうとき以外はマズイですよ。

 直しましょう。ぜひ直しましょう。

 正しく読んでもらおうと思うと、こうなります。

 もうこれは、これがほぼ正解だと思ってもらっていいやつです。


 この間のやり残しの宿題を、先生に叱られて渋々やっていたとき、枝豆くんが邪魔をしに来た。

 だから、ぼくは野球をしにいくことに決めた。


 ついでに1文も長かったので、句点さんにも働いてもらいました。これで「んんん?」ってなることはなくなったんじゃないでしょうか。


 どうでしたか〜? これも結構よく見かけるやつらなので、頑張って説明してみました。

 句読点の位置は人によって個性が出るので、一つひとつの判断が難しいところですが、③の「うっかり叙述トリックしてますがな」だけは避けたいところですよね。笑


 お次は何にしようかな〜。あとで考えまーす!

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