第17話 浮気相手のこと

 私とイルディンは、騎士のダルケンさんから話を聞かれていた。

 私とガルビム様のことを聞いた後、ダルケンさんはシメール様のことについて聞いてきた。

 シメール様は、ガルビム様の浮気相手である。その人について聞いてくるとは、どういうことなのだろうか。

 もちろん、彼女が容疑者であることはわかっている。ガルビム様に親しいが、恨みを抱いていてもおかしくはない人だからだ。

 ただ、私は、シメール様のことはよく知らない。聞かれても、そこまで有益な情報は出せないだろう。


「シメール様のこととは、一体どういうことですか?」

「確か、あなたはガルビム様とシメール様が浮気していた現場を目撃して、婚約破棄に至ったのですよね?」

「ええ、そうですね……」

「心苦しいかもしれませんが、その時の様子を聞かせてもらえませんか?」

「あ、はい」


 ダルケンさんが聞いてきたのは、ガルビム様とシメール様の浮気現場のことだった。

 別に、私はそれを話すことに心苦しさを感じることはない。あの現場に、悲しみなどは覚えていないからだ。

 ただ、それを聞いたとしてどうするのだろうか。特に情報があるという訳ではない気がする。だが、専門家が聞いてきているのだから、話せばいいだろう。


「えっと……普通に抱き合っていて、私が出て行ったら、ガルビム様は焦りました。ただ、シメール様はそこまで焦っていませんでしたね。その後、私が婚約破棄すると言って……ガルビム様は焦って、シメール様はそれを聞いて喜んでいました。自分が、婚約者になれると思ったようで……」

「なるほど……」


 私は、その時のことを思い出しながら説明した。

 そこまで鮮明に覚えている訳ではないが、大体間違っていないはずだ。

 その話を、ダルケンさんは興味深そうに聞いている。何か、わかったことでもあるのだろうか。


「あの……私の話で、何かわかったのでしょうか?」

「ええ、わかりました。シメール様は、どうやら、ガルビム様にかなり執着していたようですね」

「執着……確かに、狂信的に彼を愛しているようには見えましたね」


 ダルケンさんの言う通り、シメール様はガルビム様にかなり執心していた。

 何故、あのような男にそこまで熱を持てるのかはわからないが、かなり愛していたようである。


「そのことで、彼女が犯人足りえる……あなたは、そう考えているのですか?」

「おや……」

「え?」


 そこで、今まで黙っていたイルディンが声をあげた。

 その言葉に、私は少しだけ驚いたのだった。

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