第15話 感じの悪い騎士

 お父様からガルビム様の事件を聞かされて数日後、私とイルディンはとある人達と対面していた。

 その人達は、騎士団の団員でガルビム様の事件の調査員であるらしい。

 ゾーガン・ウォーハイとその部下のメデッセル・ジャルミー。どちらも、少し感じの悪い騎士達である。

 二人は、事件について私に話を聞きたいと訪ねて来た。断る理由も無いので、付き添いのイルディンとともに、話すことになったのである。


「……アルメネア様は、つい最近までガルビム様と婚約していたのですな?」

「ええ……」

「ただ、彼の浮気が原因で婚約破棄となった。そういう認識でよろしいのでしょうか?」

「その通りです」


 ゾーガンという人物は、手元のメモらしきものを見ながら、私に確認してきた。

 なんというか、とても嫌な予感がする。目の前の人物は、とてもまともな騎士には見えない。


「浮気というのは、ひどいことですね。それで婚約破棄。当然のことですな」

「はい……」

「そして、当然のことながら、彼に怒りを覚えている。そういう認識で間違いはありませんか?」


 ゾーガンは、私に対して怒りがあったかを聞いてきた。

 言葉の端々から、ゾーガンが私を犯人だと決めつけていることがわかる。どう考えても、彼はまともな騎士ではない。


「ええ、彼の行いには怒りを覚えていました」

「そうですか」


 私の答えに、ゾーガンは口の端を歪めた。

 その邪悪な笑みは、明らかに正義の看板を掲げる組織に属する人間がしていい笑みではない。

 このような人間が騎士であるという事実に、私は不快感を覚えずにはいられなかった。もっとまともな人物が、騎士になるべきなのではないだろうか。


「それで殺そうとした……そういうことなのでしょう?」

「……いえ、そんなことはありません」


 そこで、いきなりゾーガンは殺意について聞いてきた。

 まさか、ここでそう聞いてくるとは思っていなかった。そういう質問は、もっと色々と詰めてから聞くべきものだろう。

 当然、私はその発言を否定する。私は、殺人未遂に関与していない。これだけでは、はっきりと言っておかなければならないだろう。


「隠し通せると思わないことですな。侯爵家の令嬢だろうと、私達は容赦しません」

「なっ……」


 ゾーガンは、明らかに私を犯人だと決めつけていた。

 普通に捜査していれば、犯人の候補など腐る程いるだろう。その中で、私を標的に決めている。それは、明らかにおかしいことである。


「今日は、これで失礼します。ただ、次はもっと苦しくなりますよ。自ら名乗り出ることをお勧めしますがね」


 それだけ言って、ゾーガンとメデッセルは立ち上がった。もう帰るつもりのようである。

 どうやら、騎士団の中でも腐っている人間が調査にあたってしまっているようだ。それは、私にとってとても悲しいことである。

 そして、これからが苦しくなることを表すことだった。

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