第27話
なんとか異世界で、できた家族には幸せを。
そう思う日々を妹である
妹である事はゆずれない!
と、まぁアホな強情はさておき、彼女が知っているか分からないけど
本人に言うとショック受けるだろうなぁ……
何でそんな本人も知らない事を俺が知っているか?
俺の[鑑定]さんは[極]なので、気になった事は何でも見れてしまう。
…… やっぱりホントに20歳超えてんのかよ……
まずは、さすがロリ成人と納得して種族と覚えているスキル、魔法の確認をして…… すごい鍛え方しとるなと驚いて……
[鑑定]が極みになるとインターネットの辞書サイトみたいに[気になる]部分を詳しく調べていけるんだけど……
昼寝中の
エルフとビッグフットのハーフの子孫は数が少ないが、産まれた子は全て30を前に死んでいる事が浮かび上がっていた。
「あぁぁ…… 」
思わず声が漏れたね。家族の寿命なんて知るもんじゃねぇやなと酷い気分で数日過ごしたもんさ。
そうか…… ロリコンな見た目は、自分の命をもたせるために成長を体が止めているのか…… エルフとかファンタジーだけど、そうか妖精の眷属だもんなエルフって。幼いままというのも…… あるのか…… そうか。
俺はあの日からなんとか…… 婆さんになった
「…… 大分、溜まったかな?」
俺はスノーエンドの町にあるコテージで昼食を食べた後、窓辺にある
最高にスランバーです。贅沢です。
それはやっぱりストレージの中にあった。現代の地球では寿命自体を人の力で伸ばす事はムリだろう。
たしかに医療や生活、食事や世界中に溢れる情報を駆使すれば可能性はある
でも異世界の
異世界おそロシア。ロシア関係ないやん!
椅子に揺れながら俺が手に持っているのはストレージ内にあった
リングの一部が切れていてサイズを簡単に変えれるフォークリングっていう物に、
[鑑定]さんによると
【この[延命の指輪]は古代共和国の女性元首が付けていた物。
女性元首が死んでしまうと国が崩壊する危険があるので旅人ワールと協力して作り上げた珠玉の品。
魔力を貯める事により寿命が加算されていく機能がある。古代共和国の女性元首は人族であるが、この[延命の指輪]の効果によって300歳まで生きた。
指輪が3つなのは女性元首とその子供2人のもの。】
ホラホラ!
俺すごない?
ピューッ!カタカタ……
窓に風が当たる。この町の名前はスノーエンド、雪はさらに北の王国よりは少ないけど、少ないだけで雪が積もるらしい。
ロシアの寒いところと、日本の東北の差みたいな感じかな?
スノーのエンドなんだけどやっぱり積もる。小氷河期で名前の由来からズレちゃってるのかな?
などなど つまらない事を考えながら魔力をまた[延命の指輪]に籠める。
────
推定寿命まであと10年生きれないなんて信じない。
自分でも意味の分からない怒りを振り切るように魔力を籠める。
そして魔力切れでまた眠たくなる……
北進する魔導自動車の中でもずっと魔力籠めていたから大分と寿命の素が溜まっている…… はず?
うつらうつらとしながら窓の外を見る。
彼女は…… すぐに子供が欲しいとか言うんだもんなぁ…… やっぱり寿命が短いとか知らないっぽいなぁ…… 産後の肥立とかで死んだら…… やだやだ。
ホントは戦って欲しくもないんだけど、力をつけさせたのは寿命を知る前。いまさら取り上げてしまうと……
「はぁ…… 」
笑い話に出来る様に指輪を仕上げないとな。
苦笑いする俺の顔に窓から冷たい隙間風があたる。
…… もうすぐ、この国は雪に覆われる。
町の偉いさんは積雪が始まる前に中央の都市に行き政務を行うから春まで帰ってこない。
スタンピードの事とか色々は権力者に知られるまで時間の余裕がある。
スタンピードで町を守ったから住民には好印象だ。すんごく暮らしやすい。このコテージも掃除まで済ませてから貸してくれた。見た目もなんか良き魔女の家みたいな感じ?よき!好みすぎる!
ホントにゆっくりできるなぁ……
少し部屋が冷えてきたから俺は暖炉に薪(まき)を焼(く)べて直す。
暖炉から少し外し直火にしないよう吊るしたスープ鍋から玉ねぎと芋が煮える優しい匂いがする。あと2時間てところか?
「ふふふ…… 雪国のバカンスですなぁ」
俺は再び
また風を受けてカタカタとなる窓、
ゆっくり降ってくる雪……
部屋のドアの外から
俺の意識は魔力切れと共に眠りに落ちていく……
そんな冬の始まりの日の話。
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──── 夜、ヒロキが魔力切れを繰り返して気絶するように寝て、他の家族もまた各自の部屋で寂寞(かんもく)した後────
リーナリアはコテージのリビングで暖炉の炎を見ながらホットミルクを飲んでいた。
ホットミルクのお気に入りのレシピはコップに蜂蜜を大さじ三杯入れてから温めたミルクを入れてそのまんま飲むというもの。
混ぜずに飲んで、後から甘いのがくるのを楽しむ。
母と父がお酒を蜂蜜で割る時に、自分も飲みたいとせがんだ事がある。
もう成人してるからお酒飲んでもいいじゃないか?と
しかし父と母は、リーナリアは体を大切にしないといけないと辛そうに笑って…… お酒を飲まなくなった。
家族3人で冬はホットミルクを飲む。
それは悲しい理由だったが、両親の優しさでもあり、リーナリアは母が入れてくれた蜂蜜が沈澱するホットミルクが今でも好きなのだ。
暖炉の炎のゆらめきに、ホットミルクの甘さにリーナリアは心が弱くなり泣きたくなっていた。
その時、リビングの緘黙(かんもく)に明るい声が容喙(ようかい)する。
「お、リーナちゃん!まだ起きてるのかい?」
「……
それは、寝たと思っていたローワンだった。
少し酔っているのかヒョッコヒョッコと歩く老人にリーナリアは苦笑する。
「全くよぉ!ワシの年齢を[鑑定]覚えたからってプロロップが一番歳下とか馬鹿にしやがって!今まで部屋で説教してたんだよー!」
「くすくす……
「全く嫌になるわい、ところでリーナちゃんは何歳になるんだい?」
ローワンは自然にリーナリアの前の机に座る。
リーナリアは残り2割の飲みかけのホットミルクを見ながらポツリと年齢を答えた。
ローワンの目を見るのが、なんとなく辛かったのだ。
そのあと、ローワンの明るい声が聞こえて来ない事に気づいたリーナリアはふと顔を上げる。
そこには眉をハの字にし辛そうにするローワンの顔があった。
「すまない、リーナちゃん…… さっきまで
「…… え?なんで?」
リーリアはいきなり嗄(しゃが)れた声になるローワンに疑問の声をひとつ。
「リーナちゃん、ワシは元はつくが帝国の頭脳の1人じゃった。それに鑑定の熟練度をヒロに大幅に上げてもろうた。見えるんじゃよ…… リーナちゃん」
「あー…… はい」
リーナリアは次に来る言葉に気がついて手をぐっ膝の上で握る
「悪い…… とは思うのじゃが家族が辛いのにワシは無視できん愚か者なのじゃよ。リーナちゃんおんしエルフとビッグフットのハーフ…… じゃな?」
「…… はい」
リーナリアは両親が自分の運命を悲しむのを見てきたから、人が自分を見て気に病む事に申し訳なさを覚えてしまっていた。
ローワンはトントントンと机を指で何度か打つと、大きなため息を吐いた。
「ヒロに言わんのか?ヒロは…… きっとリーナちゃんの想いに応えてくれるぞい?それが懇志(こんし)、憐憫(れんびん)であったとしても…… すまん、言葉が悪い」
ローワンはいずれは死ぬ命なのだから、せめて幸せに過ごして欲しいと思い、それは馬鹿な事を言ったと恥じて自分の頭をゴツリと拳骨する。
「アタイは…… わたしは…… それは嫌なの。わたしの両親はこの寿命の短さに毎日、毎日、泣いてくれました。きっと…… わたしはきっと産まれる、産まれると信じている子供に泣いてしまいます」
ローワンは…… 初めてリーナリアが子供ではないと理解した。
暖炉の光りが当たる今のリーナリアの顔はいつもの潑剌(はつらつ)としたものではなく、慈しみ深く辛さを飲み込んで生きてきた顔だったからだ。
「子供には…… せめて両親のうちの1人は笑って生活を…… して…… 欲しいの。わたしは早く死ぬわ。子供は残されてしまうの。いつか子供が泣いた時にヒロが納得して子供を抱きしめて欲しい…… 」
それに…… 子供もわたしと同じように寿命が短かったら…… 子供が恨むのは母親1人でいい。
ヒロキにはせめて自分が死んだ後も私を愛していて欲しい
その言葉はリーナリアの口から出せなかった。
とても怖くて、とても悲しかったからだ。
「リーナリア、すまぬ…… 全てが…… すまない」
「いえ…… 」
窓の外に雪が積もっていく
生きているうちに、こんな雪を見れるなんて……
リーナリアは悲しみから意識を逸らせる。
自分の涙に気付くのは、残ったホットミルクを飲もうと下を向いた時だった。
甘い……
リーナリアはあと2割だけコップに残った蜂蜜が濃いく残るホットミルクを口にして意識なく呟(つぶ)やく。
「わたしの命は…… このホットミルクの残りの量と同じぐらいかな?」
残りの命がこれぐらい甘ければいいな……
雪のように静かに、リーナリアの気持ちが積み重なっていく。
ヒロキに愛されたいと。
そんな冬の始まりの夜の話。
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