第26話


 えっとヒロキです。

 魔導自動車が高速で進む中、爺ちゃん達にはスクロールで思い思いに覚えたい魔法やらスキルやらを習得してもらいながら北上。数日後の夕暮れにやっと町が見えました。


 はい、御約束ですよー!


 みなさんいいですか?はい、600匹ぐらいの数のスケルトンっぽい魔物が集団暴走(スタンピード)!町が襲われていました!

 さっすが、みなさんお馴染みですね!ネタとしては定番ですヒャッホウ!


 まぁ、この惑星の人からしたらたまったもんじゃないんですけども。


 町の壁は低く、ぐるりと町を囲むように高さ4メートルぐらい。

 汚いグランジ石で生成した煉瓦(れんが)建て…… 荒い組積造(メーソンリー)なので一部が崩落して、魔物を押し戻そうとしたのか数十人の住人が魔物の持つ剣で刺されたり、弓矢で射られて死んでいるようだ。

 弓矢?魔物はパッと確認する限りでは弓もってる奴はいないから、先に町の冒険者が倒したのかな?


 しっかし、ファンタジーだなスケルトンとかどうやって歩いているんだ?骨しかないのに…… ?


 「うむぅワシの記憶が正しければ、アレはスケルトンではない。あの魔物…… いや魔物というより悪霊じゃな。名はベイコクじゃな」

 ローワン爺ちゃん魔術爺がスタンピードで町に集まる悪霊の名前を記憶から導き出す。



 やっぱり年の功って凄いね[鑑定]で確認のために観た悪霊の名前とドンピシャだわ。


 ベイコクはファンタジー的に言えばスケルトンナイトみたいな見た目をしている。武器を持ち歩くたびにギシリギシリと関節部の骨が軋(きし)み鳴る


 昔、目のあったはずの眼窩(がんか)からはユラユラと赤い光が何かを探すように揺れている。熱くないのかな?


 「キャ───────ッ」

 「うっ!」

 「なに!ヒロ、あれキモいよ!」


 ベイコクさんめっちゃ黒板を引っ掻くような不快な声でお叫びになられる。怖い。


 「ヒロよ、よく見るんじゃ…… 観察して覚えるのじゃ。スケルトンとは違う部分…… ベイコクの1番の特徴はその皮膚にある」

 「皮膚って…… 骸骨しかないじゃない?」

 ホレホレと爺ちゃんに促され目を細める


 「うっわ!キモい薄い透明な皮膚があるじゃん!」

 そうなのである。ベイコクはカエルの卵みたいな透明な皮膜に覆われているのだ!再度言う!キモいと!


 「うむ、ベイコクは透明の弓を使い人の臓器を喰らうという、どうしようもない悪霊じゃ」

 「弓まで透明とは…… そこまでは知らぬかった。ヒロとりあえず、町を助けてみてはどうかのぅ?」

 軽いね爺ちゃん達。てか逃げようよ!?血気盛んすぎじゃないっすか?


 俺があわあわとしているとバンコクは此方(こちら)に気付き50ほどの集団が骨の鳴る音と共に近づいてきた。


 「ヒロ!行ってきます!終わったらギュッね!」

 そういう納得が出来ない約束を勝手にしてリーナリアロリ成人が杖を持って走り出し、ロックマンさんバカ親父が魔導自動車から弓を取り出して構えた。

 ギュッは止めて!死にたない!

 リーナリアロリ成人がバンコクをズバンズバン!と杖で殴り飛ばし戦端を開くと町の方から歓声が聞こえてくる。



 期待されたら逃げられないじゃん!やりゃあいいんでしょ!全く!


 俺はベイコクさんがとにかくヌメヌメで気持ち悪いからストレージから岩山をドスンと一番ベイコクさんが集まっている場所と、此方(こちら)に近づいて来ている集団に落として

 …… さてどうしよう?どう戦うかな?って考えながらお茶を飲む。



 いやー温かいお茶最高ストレージ様ホント有能。神様ありがとう。 


 物をストレージを操作して落とす。この戦法が出来るとは何となく思っていたけど…… 座標を目視して空から岩山をまんまと落とせるんだもん。チートすぎるわ。


 え?随分とオマエは余裕があるなって?


 …… だってねぇ……


 「物理!物理!物理ぃぃぃぃ!そして聖魔法ぅぅぅ!」

 リーナリアロリ成人が突っ込んでバンコクの骨をバラバラにして、囲まれたら聖魔法のビームで乱れ打ち。

 「むん!むん!むん!」

 ロックマンさんバカ親父が連続して放つ弓で一撃2殺、いや3匹とか頭を貫いて殺したりしているな。


 爺ちゃん達4人は覚えたての魔法の試し撃ちで広範囲に殲滅。

 俺はやる事ないんですもん。安定し過ぎでしょコレ。

 無駄に手を出したらベイコク殲滅戦線の維持が崩れちゃう。


 「まさかこの歳になって、しかも座っているだけで強くなるのは思わなんだ」

 ケリスト爺ちゃん魔道具爺の呟きに爺ちゃん達はうむうむ、と頷(うなず)く。


 ケリスト爺ちゃん魔道具爺は戦闘職ではないから尚更(なおさら)なんだろうね。


 時間的には1時間ぐらい?


 最初に俺が落とした岩山で半分以上のバンコクさんが潰れていたのもあって、戦力過多な我が家族には怪我もなくスタンピードを終わらせた。


 「ヒロ、バンコクの死体から素材とか剝(は)がんでええのかえ?」

 「うん、ケリスト爺ちゃん魔道具爺。お金があるのにヌメヌメを触る必要もないかなって」

 「贅沢な話じゃのぅ…… 」

 リーナリアロリ成人以外は遠距離で戦っていたので、魔導自動車をストレージに収納してから、ひょっこりひょっこり歩く爺ちゃん達と町の門前まで歩きリーナリアロリ成人と合流。


 「門、開かないねぇ〜?」

 バンコクさんのヌメヌメでベトベトに濡れたまま俺に近づくリーナリアロリ成人に軽く引いて、早よ湯でも浴びてもらおうと門へ声をかける。


 「すみませーん!スタンピード止めたので開けて下さ〜い!」

 町中にある望楼(ぼうろう)の上でボケっとなっている兵士は俺の声を聞くと、ハッとした顔になり何か指示を門の方に出すと、ガコン!という音の後に門がゆっくりと開いた。


 「おお、開いた開いた」

 「やはり若い子の声はよく通るのぉ」

 「フォッフォッ、ワシらの声は歳のせいで嗄(しゃが)れてしもうとるからのぅ」

 お爺ちゃん達によく分からない感謝をされながら俺たちは、ベイコクの集団暴走に襲われていた北の国の南端の町エンドスノーに入った。



 ちょい目立ち過ぎ?

 まぁ…… スタンピードを終わらせた時点で目立ってますけども…… 領主とか権力者に目をつけられませんようにと願い町に入ると…… ホラホラ…… めっちゃ町中の人がお出迎えですよ。


 嫌んなっちゃう!


 「む、ヒロよ、スタンピードを7人で止めたのだ誇るがよい」

 「違うんだよな…… あっさり目立たず町に入りたかったよ」

 「む、であるか、」

 

 目立たず…… 町に入りたかったよぉ。あとでお姉さんがいる店とか覗きたかったのになぁ…… あーあ、たくさんの人に顔バレしちゃってるよ。


 覗きたかったのになぁぁぁ!!!

 

─────────────────────────

ベイコック(またはベイコク)baykok


<i539183|25380>

カクヨムでは画像挿入出来ないみたいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る