第17話


 「すみません、謎の衝撃波で当ホテルの窓が割れてしまいまして」

 「いーえー大丈夫ですよー、えっとこれ寄付です修繕にお役立て下さいねー」


 ホテルのフロントマンの謝罪に対し、金貨数枚の寄付をして部屋に戻る。


 まぁ───────町はゴミ箱やバケツやらをひっくり返したような有様(ありさま)だった。

 リーナリアもその風景を見て落ち込んでいるし…… 悪い事しちゃったなぁ…… 。



 「は─────────い!第2回レベリングどうするか会議ー!」

 「…… 義父様(おとうさま)…… 」

 「うむ、好きにさせておきなさい。」


 ひどくない?


 「えっと、正直に言うと精霊術は扱いづらすぎて使えません」

 これにはリーナリアとロックマンさんバカ親父もコクリと(うなず)肯く。だよねぇ。


 「アタイは…… 怖かった」

 「うん、リーナリアごめんね」

 「…… 大丈夫、ついて行くって決めたから信じてる」


 おおふぅ…… リーナリアの両親は大恋愛の人だったみたいだし遺伝かな?思いが重い。

 涙目でじっと見てくるリーナリアから目を逸らす。


 「えっとリーナリアは回復担当でどう?」

 「うむ、急であるし浅はかではあるが、それも良し」

 やっぱり酷くない?


 「り…… リーナリアはどう?」

 「うん、回復なら…… 迷惑かからない?」

 「うん、たぶん」

 「もし、なにかあったら責任とってね?」


 おふぅ重いでござる、重いでござる。

 え?リーナリアのお母さんからお父さんにアプローチしたの?ほーん?その情報はいるの?


 「うむ、うむ、」

 「えへへ、アタイのお母ちゃんから聞いたいざ・・と言う時の言葉なんだー。ね?次に失敗したらヒロキ責任とってね?」


 うーむ、重いし怖い。ちゃんとせねば。



□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 はい、問題が発生しました。

 前回と同じで、ゼーゼーと息を荒くしてベッドに寝込むリーナリア。


 「うむ、私の体の傷が全て癒えているな」

 「あ、俺の指の傷も消えてるわ。」

 

 …… えっと言い訳をさせて下さい。

 やっぱり美少女だからいいカッコしたいじゃないですか。


 そして与えましたよええ。


 スキル[聖女の聖回復魔法][極]

    聖女の称号を得るに足る聖魔法

    回復特化。

    自身の持つ魔力量を超える回復魔法が使える


  

 リーナリアがエリアヒールっての?それを使ったらM84スタングレネードを使ったみたいに目の前がビカッと光りましたよ。ええ。

 でも目眩しにならない意味不明な光…… 目を開けていても眩しさで目を開けられないという事はないんだよ。しかも眩しい光を見ていると目が癒える感覚がある…… 超常現象だねこれは。



 その慈光(じこう)はこの部屋を中心に割れた窓から見える町の範囲全てに広がる…… これ、全ての人や動物が癒えてね?超絶癒し系じゃね?


 「えっとリーナリアはいい事したね?」

 「む、その逃げ文句はおかしいぞヒロキ」

 「ですよねー」


 結果、広範囲に攻撃ができて、広範囲に人を癒せて、ビッグフット譲りのパワーとエルフ譲りの魔力量がある美少女が出来上がった…… この子が主人公でよくね?


 「…… 〜…… 〜〜」

 うん?リーナリアがぐったりしながらブツブツと言っているな?

 「責任…… 責任…… 責任…… 」


 ひっ!ガシッ!

 逃げようとしたところでロックマンさんバカ親父に掴まれた音だよ!

 

 「うむ、娘との結婚を許そう」

 いや、アンタ誰とも結婚もしてねぇだろう!


 「今回のは失敗ちゃうし!成功やし!」

 「む、」

 「いやいやいや!人を癒せる力が失敗とか女神様に不敬だと思うんですケド─────!」

 「む、それは…… そうであるが」


 ズズッズッ……

 !?おほほほぅ…… 見とる…… リーナリアが寝ながらこちらを眼球だけ動かして見とる…… !! 

 負けない!ノーロリータ!映倫!


 「あ…… あー、回復の聖女は役に立つだろーなー可愛いしー成功だよなー」

 「…… ヒロキ、」

 ロックマンさんバカ親父に呆れられても止まらない!

 止まったらダメだ!この家族においてリーナリアは妹ポジションになるべきだ!



 お兄ちゃんは…… お兄ちゃんは…… 成人したら女遊びをしたいんだ!!


 「ぐっぐっぐっ…… 可愛い…… えへ」

 はい、チョロいっす!

 やはりイケメン無罪なんですよどの世界でも!



 「可愛いなら…… いいよね?せきに」

 「うおほん!次!第3回レベリングどうするか会議ー!」

 リーナリアちゃんったら目がマジだ!次行ってみよー!


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 「───ヒロキ次は普通だね」

 「うむ、普通…… というか熟年の冒険者が標準の世界なら普通であるな」

 「…… キミら2人、普通とは何かね?」


 いやいやいや、結構な所まで強化したと思いますよ?

 リーナリアを強化する第三弾でなんとかリーナリアとロックマンさんバカ親父が納得する組み合わせにできた。

 

 あれだよ人間は知足者富これで十分だろコラって考えで生きなきゃならんよ?え、俺?ムリムリ!ある意味、強欲の権化だもん。

 「さて、最終確認だ」

 「うんいいよヒロ!」



 ヒロとヒロキで呼び方が行ったり来たりしているリーナリアは岩に向かい杖を構えた!


 「ここで魔法だ!」

 「はい!」


 リーナリアは岩に思いっきり魔力を込めて光る杖を岩に振り下ろした!

 「てい!物理!」


 ドゴッ!という重機で打ち据えたような音がして、そこに残ったのは岩の残骸だった。


 まあ、お分かりと思うスキル構成である。


スキル[聖女の怒り][8]

    不条理を切り開く物理攻撃。

    聖女のスキルを持っている場合は

    攻撃力が倍々ばいばいになっていく


    [聖女の光魔法][10]

    聖女ビームを前方に飛ばす事ができる。

    武器・防具に付与すると折れず曲がらずの

    光の装備になる。


    [付与魔法][極]

    魔法を物質に付与できる。

    熟練度が[極]であれば付与した魔法は

    術者に解除されるまで付与されたままになる

 

 全部の熟練度を[極]にしないのは伝承モードで時間を置かないといけないからだ。めんどくさいでしょ?


 「という事で物理聖女の出来上がりです。」

 異世界物のネタキャラだね。RPGでもそうか。


 「うむ、リーナリアはビッグフットの血が入っているから力強くてよい。リーチも長距離・短距離・接近戦・回復とどの国に行っても国賓の扱いがされるだろうな」

 

 あれ?やりすぎた?

 ロックマンさんバカ親父が言うにはこの世界にスキルを忘却させるアイテムはない…… あれ?本当に無いの?…… あぁ、ありました。


 でもホラ、リーナリアもせっかく覚えたんだから大事にしよ!?もったいない事は良くない!

 「リーナリア!良くやったよ!」

 にぱっとリーナリアに愛想笑いをすると、ダダダーっガシってリーナリアが俺に抱きつく。


 おーよしよし、美少女可愛い美少女可愛い。

 「ヒロキ!」

 「え?ぐえっ!」バキバキ!


 やっぱ抱きつくな!抱きつくな!痛い痛い!

 「ヒロキ大好き!ヒロって呼んでいい?」


 うんイイからイイから離して痛い!…… あれ?痛くない?おいリーナリア回復魔法をこんなとこで使う…… 痛い痛い!痛いバキバキ関節なる!…… 痛くない。回復魔法を使うな離せ!痛いアタタタタ!


 ロックマンさんバカ親父!この筋肉バカ幼女を早く止めろ!ニッコリじゃねぇ!痛い痛い!

 「ヒョコーヒョコー…… 」

 声が出ない!酸素が肺から強制的にでる!



 ビッグフットの鯖折(さばお)りと聖女の回復が織りなす地獄のひととき。


 でも少し思ったね。あれ?リーナリアちょっとおっぱいあるね!って!さすがロリ成人…… 痛い痛い!


 「うふふ何かに目覚めそう…… 」

 ふとリーナリアの力が緩む。

 「ひっ!おい─────!バカ親父助けて!ヒョコーヒョコー…… 」


 そんな妖艶な笑顔すんなロリ成人!

 …… こうしてリーナリアの魔力が限界になるまで俺は攻め苦を受け続けた。


 俺、なんかしましたっけ!?

 

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