第16話


 「アタイ!リーナよろしくね!」

 「う、うむ」


 神の悪戯か…… いや、あの女神様ならあるか?

 今回の救出した幼女はリリアノールとちょい似てる名前のリーナリアという名前だった。


 …… 多分、俺が女の子の出会いがないと不満を漏らしたからと自意識過剰に推論するで早漏…… いや間違い候な候。


 違うんだ。成人した女の子がいいんだよ!


 赤い髪と目、身長は130センチぐらい?北欧の美少女って感じ。ロックマンさんバカ親父の妹、リリアノールさんはサイモン子爵が美少女である事を望んでいたから捕まっていた。該当するサイモンの趣味としてリーナリアが美少女なのは当然の話か。



 でもねー、子供なんだよねー。


 「む、リーナリアはヒト族ではないか」

 「うん、アタイはハーフフット!ビッグフットの父ちゃんとエルフの母ちゃんのハーフだよ!」

 

 チラッとリーナリアを見ると確かに少し耳が長いかな?

 「うむ、なら年齢は?」

 「えっと、ヒトは一年で一歳だよね?じゃあ22歳かな?」


 「そうじゃない!」

 「───‼︎‼︎?」

 ビクッとロックマンさんバカ親父とリーナリアが俺の大声でビクビクってする。すみません、ホントすみません。


 いや違う!女神様!

 望むのは年齢がお姉さんじゃない!

 容姿と年齢がお姉さんなの!


 「なぁ、ロックマンさんバカ親父ビッグフットって?」

 「む、ヒロキは知らないか。ビッグフットは高山地に住む巨躯(きょく)の亜人だ、種族的には猿人の亜人に近い」

 

 ──────え?ウッホウッホって事?こんな美少女なのに?

 チラッとリーナリアを見るとニッコリと返してくる。キラキラしとるなぁ……


 「うむ、そしてエルフは森に住む種族だ、精霊という超自然現象を操る秘密主義な人々であるな。耳が長く肌が白いのが特徴だ」


 うん、確かに肌が白いなリーナリアは。お母さん似なのかな?ウッホウッホではないもんね?


 「…… はあ、なるほど分かった。リーナリアちゃんお父さんお母さんの元に帰るでしょ?送っていくよ」

 「うん、それなんだけど…… 」


 サイモン子爵のクズさはここでも発揮した。


 ビッグフットとエルフの夫婦はエルフの里から追い出された。理由はリーナリアを身籠ったからだ。


 エルフは子を宿す時に精霊のお伺いを立てないと子供が出来ない。

 言い換えれば精霊に許しを得なければ子供は出来ない。


 エルフは里を出ると自由主義に変わる。簡単に言えばハメを外す。色々な種族と肉体関係を含めて恋愛をするのだ…… 子供は必ず作らない。

 エルフはエルフと子作りしないと里に帰れないからだ。


 何百年もの寿命があるエルフにとって、多種族の寿命は短い…… ヒト族なんかだと水車をポーッと眺めているぐらいの短さだ。

 エルフの里に帰る事…… それは1人になった時に寂しく無い為でもある。


 「うむ、それに伝わる話では他種族との子をもうけたエルフは精霊の加護を失うというな…… 精霊を騙して他種族と子を成したから…… とか」

 リーナリアはぐっと唇を噛んで涙を堪えて頷く。


 うわっ、リーナリアの両親たら大恋愛じゃん。


 ビッグフットとエルフ。

 と言っても両方ともに森での生活の達人で家を森の中に作り、動物を狩り肉を食べ、エルフの知恵で食べられる薬草や野菜を得る事で親子3人は不自由無く暮らしていたそうだ。


 「リーナリアの親父さんの親類は?」

 「アタイのお父ちゃんは旅人で同族はこの国にはいなかったんだ」

 

 そして、分かるだろ?

 サイモン子爵は、はぐれエルフの情報を得て

 はぐれエルフには美少女の娘がいて

 はぐれエルフは自領の山の中でひっそりと暮らしていて


 「…… 襲われた、か?」

 「うん、」

 「むう、もう少し苦しめてサイモンを殺すべきであったか…… 」


 …… 俺も今そう思った。懲悪(ちょうあく)とか趣味じゃないけど、無駄にチートを持つと驕ってしまうな…… 気をつけないと。


 「なぁ、リーナリア」

 「はい、ヒロ」

 「助けてあげられてホントに良かったよ。言葉は難しいけど」


 スッとリーナリアの頭を撫でる。

 苦労しなぁ…… 可哀想に。

 「もし、アタイが邪魔なら何とか生きていくよ。助けてもらった上に迷惑はかけれないからね…… 」


 おいおい、そんな寂しさを押し殺して笑われたら置いていけないじゃないか……


 「採用、家族になろう」

 「ふぇ!?か…… 家族?ぽそぽそぽそプロポーズ?」

 「あれ?ダメか?」

 「ん、んーん!いい!ついていく!」



 なんだ?ポソポソ小声で?

 うわ!なんだよ引っ付くなよ!おいロックマンさんバカ親父?優しい目をすんな!筋肉がすると怖いよ!なぁ?おい?

 

 「うむ、イケメンは得であるか?ヒロキの言葉だったな?」

 

 ロックマンさんバカ親父今に言う言葉じゃないよね?見た目幼女だよ?おい?


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



 「は─────────い!第一回レベリングどうするか会議ー!」

 「…… 義父様(おとうさま)、ヒロキはどうしたの?」

 「うむ、たまにこうなる」


 ロームン帝国のホテルに帰り、会議室で話し合いをすると2人に集まってもらったんだけど俺ってばまた空回り。


 「いや、違う。リーナリアはこれから共に生活するんだから少しでも強くしないとヤバイだろ?」

 「む、そうであるな」


 ロックマンさんバカ親父は理解したけどリーナリアはキョトンとしている。

 「えっとアナタ、私は戦う力とか無いんだけど」

 「アナタはやめなさいアナタは」

 「え?じゃあ名前呼びの方がいいの?アタイはどっちでも合わせるよ?」


 なんか、めんどくさいなぁ……

 「名前呼びで」

 「はい!」


 ニヤニヤ辞めなさいロックマンさんバカ親父


 「えっとね、隠し事するのめんどくさいのでまずはリーナリアには精霊魔法を覚えてもらいます」

 「…… ヒロキ、それは無理よ。アタイの母ちゃんから継承してアタイも精霊に見放されているんだから」


 うん、でもね……

 バサバサバサと100枚スクロールをストレージから出す。

 会議室の机の上に積んだソレを見てリーナリアは息を飲み、ロックマンさんバカ親父は普段のように内容を確かめる。


 「うむ、ヒト種族が使うのに特化した精霊…… であるか?御伽噺(おとぎばなし)の中にしか無いものであるな」

 「うん、鑑定で見たけど大昔に精霊魔法に憧れた狂人の学者が国の予算をバンバン使って編み出したものらしいな。この狂人の学者は自分が死ぬ時に国に内緒でスクロールと技術を秘匿して死んだそうだ」



 専用品(ワンオフ)でストレージの中にも200枚しか無い貴重品だ。


 「どうやら、その学者もハーフエルフでエルフへの意趣返しで作ったらしいけど…… リーナリアもハーフエルフだしいけるかなぁ…… と。おーいリーナリア?」


 時が止まったようにあんぐりとするリーナリアの体を、ゆっさゆっさと揺らすとハッと気がついたようだ。

 「ヒロキ…… スクロールってアタイの記憶が確かなら、かなりの高額なアレ?」

 「うん」

 「精霊術って母ちゃんが昔話していて、それを使いたいと憧れていた、そのやつ?」

 「憧れは知らないけど、たぶんそれ…… うわ!」


 ダッとリーナリアが飛び付き抱きしめてくる。体温高いな!


 「くれるの?」

 「うん、その為に出したんだし」

 キャーーッ!て喜んだ表情で頬擦りしない!俺はノーロリコンよ?


 「一生、離さないんだから」

 「お…… おう?」

 怖い、あとビッグフットの血が入っているから力強いから抱きしめられたら痛い。ほんと止めて!痛い痛い!


 助けろ!ロックマンさんバカ親父ほら!その筋肉の使い所だろうが!!



□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



 好意を寄せてくれる事に嫌がるほど俺は擦れていない。


 しかも美少女だ、俺はいいカッコをしたかったんだよ。軽はずみな行動だったんだよ。


 リーナリアにスリスリされたら、やっぱダメと言い切れないでしょ?ロリコンじゃない成人した女性…… ロリ成人のリーナリアが覚えた精霊術[極]はおかしい。


 ロックマンさんバカ親父の運転する4人乗りの魔導車(4WD)でドライブして試し撃ち出来るような荒野に来たんだけど…… あれ?戦争かな?


 「ヒロキよ…… あれはよかったのか?」

 「うん…… うん?…… うん…… 」


 ゼーゼーと息を荒くして大の字に倒れるリーナリアの数キロ先にはキロトン火薬で爆発させたような大穴が大地に開いている。


いや、キロトンは言い過ぎか…… でも、これは戦術核を思い起こすような…… いや精霊術だから核汚染とか無いだろうけど……


 「戦術精霊術って…… ヤバイね」

 「うむ、ただ一発打つとああして倒れるから戦いには無からないのであるが」

 「ああ、戦争しようとする国に目をつけられたらヤバイな」


 混戦では仲間への被害や使い終わると無力になるから使えない。だけど戦争なら一発ドカンしてリーナリアを回収すれば…… ヤバイねホント


 俺とロックマンさんバカ親父は顔を見合わせてため息をついた。


 衝撃波と爆風で体は砂まみれ。レベル上げしてなかったら飛ばされていたなこれ。

 リーナリアなんかすぐに倒れたから足から腰まで押し寄せた土に埋まってるし……


 塹壕(ざんごう)を土魔法で作ってからじゃないと危ないなこれ。いや、使用禁止にしないとダメだな。


 「ヒロキ」

 「うん、これは騒ぎになるね」

 衝撃波は広範囲に広がっただろうヤバイ。


 バサーっ、ズルズルっとリーナリアを土から引き摺り出して俺たち3人のチート人間は町に戻って行った。

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